大和の伝統野菜−新品種の“大和まな”誕生−


近年、野菜は健康に良いことや食材の地産地消が提唱されて、にわかに、新鮮でおいしい地場野菜に人気が集まっている。関西では京野菜やなにわ野菜が有名だ。 2005年奈良県は大和野菜21品目を選定し、このうち、戦前から県内で生産されていて地域の歴史・文化を受け継いだ栽培方法で味、香り、形などに特徴を持つ野菜17品目を“大和の伝統野菜”と認定した。また、栽培や収穫出荷に手間を掛けて栄養やおいしさを増した奈良県オリジナルの野菜4品目を“大和のこだわり野菜”として選定した。

大和の伝統野菜(17品目)
大和まな、千筋みずな、宇陀金ごぼう、ひもとうがらし、軟白ずいき、大和いも、祝だいこん、結崎ネブカ、小しょうが、花みょうが、大和きくな、片平あかね、紫とうがらし、黄金まくわ、大和三尺きゅうり、大和丸なす、下北春まな

大和のこだわり野菜(4品目)
大和ふとねぎ、香りごぼう、半白きゅうり、レタスなどの朝採り野菜

このなかで、“大和まな”は大変おいしい野菜として昔から県内で栽培され、特に冬の葉菜として重宝されているが、葉の形が不揃いであったり、収穫後黄色くなりやすいなどの欠点があり生産が限定され、一般家庭には“幻の野菜”であった。 奈良県は品質のよい“大和まな”をブランド野菜として全国に普及するために、奈良県農業総合センターが、奈良先端科学技術大、奈良女子大、ナント種苗と共同して、新品種の“大和まな”の開発に取り組み、最新の育種の技術と遺伝子学の知識を駆使して、大量栽培に適したF1ハイブリッド種子を誕生させた(2009年10月22日発表)。 新品種の種子で栽培した“大和まな”は、従来の品種に比べ、冬季だけでなくほぼ周年栽培ができること、葉の形が大きく収穫後黄色くなりにくく日持ちの良いこと、抗炎症成分の含量が高いなど、優れた特徴を持つ大和野菜のホープである。 “大和まな”はアブラナ科のツケナ(漬け菜)のグループに属し、小松菜、野沢菜、畑菜、水菜、壬生菜、広島菜、シロナ、チンゲン菜などと同じ仲間で、これらの葉菜よりも軟らかく、風味にくせが無く、甘味に富みおいしいと評判である。炊きあわせ、おひたし、漬物に向く。日本料理だけでなく欧風料理の食材としても期待がかかる。

NPO法人奈良の食文化研究会  的場 輝佳
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