奥明日香 「さらら」
万葉のロマン溢れる名にひかれ、飛鳥川の源流にほどちかい栢森にある「奥明日香 さらら」をたずねた。地元で採れる旬の野菜や山菜が主役の料理がいただけるそうだ。その昔、大海人皇子(後の天武天皇)と鵜野讃良皇女(後の持統天皇)がこの地を通って吉野宮滝へ向かわれたとされる深い歴史のある地域である。石舞台から芋峠を越えて吉野へ続く道を進むと、稲渕、栢森、入谷の集落があり、棚田や彼岸花で知られる稲渕の春は、菜の花も美しい。
「奥明日香 さらら」は、柏森集落を少し入ったところにあり、古民家が店になっている。代表の坂本博子さんがにこやかに迎えてくださった。
この日の献立は、
@神奈備豆腐(豆乳と吉野葛の寄せ物でとてもなめらか)
A菜の花の黄金巻き(菜の花を薄焼き卵で巻いたもの)
B幸そぼろ(幸子さんのオリジナルで大根なますをそぼろで合え、上にしめ鯖がのっている。以前はなますの中に混ぜ込んでいたが、鯖が苦手な方もおられるので上にのせているという。細やかな心づかいだ。また、そぼろが変わっている)
C切干大根の煮物(切干は入谷のお年寄りの手作りで、栢森ではきれいに干し上がらないそうだ)
Dピリ辛こんにゃくの蕗のとうの味噌かけ
Eさしみこんにゃく
F黒米入りごはん
G汁物(そうめん、芹)
H山菜の天ぷら(よもぎ、雪の下、つくし)
I豆乳鍋さらら風(ごぼう、白菜、人参、葱、生椎茸、大和肉鶏)
J漬物(たくあんは坂本さんのお母さんが漬けたもの)
Kデザ−ト(寒天の柚子甘露煮のせ)
途中、野甘草の味噌和えもいただいた。ニラや分葱に似てほろ苦く、シャキシャキとしてまさに春の味と言える。味付けは普段のままと言うが、しっかりついていてくどくなく、どれもやさしい。量が多そうに見えたが、全部いただいてしまった。材料は、自分たちが作ったもの、明日香で採れたもの、地域の特産品などを使い、忙しくても出来合いのものは使わない、主婦が作るが手抜きはしないを心がけていると言う。
奥明日香のすばらしさに気づいたのは、平成14年、3集落の地域おこし「神奈備の郷活性化推進委員会」の活動がきっかけと言う。しかし、これといった特産品もなく、それなら自分たちが食べている料理を、この地に足を運んでもらって食べてもらおうということになり「さらら膳」が誕生した。最初は年に数回だけだったが、常時楽しんでもらいたい、地産地消を伝えていきたいという思いがつのり、場所探し、資金調達などをのりこえて平成20年4月「さらら」をオープンすることができた。グループは8名程で、お互い時間の都合をつけたり、忙しいときは応援をたのんだりと、1年が過ぎてようやく「自分達でやっていこうという自覚が持てるようになりました」。と坂本さんは言う。
季節の移ろいと共に、四季折々の味が楽しめる。奥明日香という風景の中で、どこか懐かしくぬくもりのあるふるさとの味に出会った。
「奥明日香さらら」
明日香村栢森137 TEL0744-54-5005 午前11時〜午後4時 月から水は休み
「さらら膳」2千円 要予約
作ってみよう「変わりなます」
「材料(4人分)」
大根150g、人参20g、きゅうり半本、しらす干し20g
{ 酢(大さじ2)、出汁(大さじ1)、砂糖(大さじ1)、塩(少々) }
{ 高野豆腐(1個)、出汁(100ml)、砂糖(小さじ1)、淡口(小さじ1) }
「作り方」
@高野豆腐はもどし、フードプロセッサーにかけて細かくし、出汁と調味料で煮て水分を切る。
A野菜はせん切りにして塩をあて、しんなりしたら水洗いして絞り、しらす干しと共に甘酢で合える。
BAを@のそぼろで合え、器に盛りつける。
NPO法人奈良の食文化研究会
TEL:090-1021-0460
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