半白きゅうり


きゅうりはウリ科に属する一年草蔓草。文献によれば原産地はインド。胡は西城の意味で、胡の瓜 から「胡瓜」と名づけられた。また完熟した実が黄色くなることから「黄瓜」と呼ばれるようになっ たともいわれている。半白きゅうりは大和野菜に選ばれているこだわり野菜。昔は半白(はんじろ) と読んでいて、半分がミドリ、半分が白いきゅうりで皮が柔らかく歯ざわりの良いきゅうりである。96 %が水分で残りの4%はビタミンや無機質であり栄養面ではあまり期待はできないが、古くから「水 分をおろす」といわれ田植えの頃の湿度が高い季節に利尿効果がある食品として食べたようである。 そんな昔からの半白きゅうりを今なお栽培しておられる。葛城市苗堂の西岡農園(西岡弥臣さん)を 訪ねてみた。土用の猛暑の中、伺った農園では今年の収穫はすでに終わっていて、ハウスの中の半白 きゅうりは、すっかり根つるを倒されていた。

西岡さんのお話では、昔はきゅうりといえば城のみで、品種改良等で作り続けるうちに変化して、生 食用の歯切れの良い青きゅうりが出来るようになった。そしてこの青きゅうりは冬至、市場では高値 で売れた。早く出荷すればするほど高値で売れたことから、現在のようなビニールハウスがなかっ た時代に蝋紙と竹で工夫してハウスを作って青きゅうりの促成栽培に力を入れた。品種改良で病気に もつ良い、一年中量産が出来る青きゅうりができるようになり人気が集中。冬至、このあたりのほとん どの農家では蕎麦を作っていたが、それよりも高収入になるので、次第に青きゅうりへと転作する農 家が急増した。一方、しろきゅうりは病気に弱いし、収穫量が少ない。管理が難しい点から栽培のリス クが高かった。

だから、だんだんと自家栽培のみになり市場から消えていった。
だが、西岡さんのところでは青きゅうりを主にしながらも、保存のためにしろきゅうり栽培を続けて種 取りをしてきた。平成の初め志を立て、半白きゅうりのみに千年するようになり現在も脈久と続けて いる。皮薄く生食にも、熱を加えても、食感が変わらない独特のシャキシャキ感の半白きゅうり。香 りや苦味も昔ながらの半白きゅうりの味。半白きゅうり本来の持ち味を、これからも守って行きたい と日夜努力なさっている。後継者難でどこまで続けられるかわからない。と言いながらも 半白きゅうりを愛し、求めてくださる消費者がおられる限り頑張って行きたい。またち行き保全や食料 の安全確保の情熱を傾けたいと西岡さんは熱く語る。返り咲いたなつかしい半白きゅうり。途絶える ことなく作り続けていただく事を念じて、来春の収穫が待ち遠しい。

西岡さんのハウスでは毎年、1月上旬に種を植え三月中旬から7月中旬までに実が出来る。 すでにファンの方も、まだ食べたことがない方も、来年こそはこの幻とも言われる半白きゅうりを味 わって欲しいものである。

NPO法人奈良の食文化研究会
上田 邦子 TEL:090-1021-0460