たなばた漬


「手間をかけた高級品」
「たなばた漬、ご存知ですか」「お宅にたなばた漬けありますか」と尋ねると、「知らない」「聞いたことない」という店の返事。困っていたところ、漬物の「あしびや本舗」(本社・奈良市芝辻町二丁目)が扱っていることを知った。


オーナー夫人の西田由美子さんにお会いして、それが「新うり漬」であることが分かった。年に一度、七夕の時期に樽出しするウリ漬けのことで、そのように呼ばれるようになったらしい。浅漬けでもなく、奈良漬でもないぜいたくなお漬物である。
「新うり漬」は今年の越しウリを今年の新酒かす短期間に何回も漬け替えて、ぜいたくに仕上げたもので、高級なお漬物である。奈良漬、三輪そうめんと並び、古い伝統を持つ、奈良のさわやかな味覚である。まだ青みの残る白ウリの色合いとコリッとした歯ざわり、そして熟成した酒かすのほんのりとした香りは、「新うり漬け」ならではの特徴だそうである。

実は「新うり漬け」は短期間に漬け込むため奈良漬とは違い、その年のウリや酒かすの出来具合、気温、湿度に左右されるため、味の安定度が悪く、なかなか商品にならなかったそうである。
うまくできた年には、得意客に一年にお礼を込めて贈っていたのだそうだ。ところが是非、お中元に使いたいという声が多くなったため研究を重ね、やって満足のいく安定度になったので、商品化に踏み切ったそうだ。こうして「新うり漬け(たなばた漬け)」が誕生したと、西田さんは話してくださった。
悠久の時の流れの中で、変わゆくうつせみを見守ってきた奈良、その奈良の中でも最も古い奈良町は時を越え、時代を超えて人の心を癒してくれる。そんな奈良町の中に「馬酔木や本舗」の奈良町本店「あしびの郷」(奈良市脇戸町)がある。水の流れる庭、食事処、ギャラリー、蔵、サロンがある。
この時期、奈良町の散策の折には、「新うり漬け(たなばた漬け)」を賞味されてみてはいかがでしょうか。




NPO法人奈良の食文化研究会  澤田参子
 TEL:090-1021-0460