豪商旧邸の雰囲気でいただく品のある甘味 ――甘味処「みやけ」


甘味処「みやけ」は、近鉄奈良線の富雄駅から程ない(五〜六分)閑静な住宅地にある。「ここが甘味処?」と首をかしげたくなる古風な風情ただよう町家である。それもそのはず、昔は大阪の豪商(両替商)鴻池家の佇まいである。 時は流れ、その建物が取り壊される時、甘味処の社長(三宅和宏氏)の祖父がこの地に移築し「町人資料館」として発足した(一九八○年)。 その後は、だんだん訪れる人も少なくなり休眠状態になっていたところを、製餡(あん)業を営んでいた三宅氏が、二○○九年秋に甘味処「みやけ」としてオープンした。

広い和室には使いこなされた大きなテーブル(座卓)が並び、ガラス戸越しに整えられた庭の竹林などを眺めながら、喫茶室で品の良い美味しい桜餅とお抹茶を楽しみ、社長の三宅和宏氏にお菓子づくりのモットーについて伺った。

「みやけ」には喫茶コーナーと売店があるが、モットーとしては、いずれのお菓子も
@できるだけ良い食材を使い、添加物は極力控える。
A地元奈良県産の食材を使う。――例えば、苺大福の苺は奈良県産の苺を使い、夏のブルーベリー氷には宇陀産を、というように。
B子どもに良いお菓子を、と考えている。――確かに今の子どもは和菓子離れがひどく、(お菓子だけでなく、ご飯とおかずの摂り方にもよるが)肥満児も多い。和菓子や餡にも慣れさせたい、との思いが込められている。

喫茶コーナーの数あるお菓子をいくつか取り上げると
○お菓子とお抹茶のセット(落ち着いた大人の味)

○パイ大福 バニラアイス添え――これはパイ生地に、つぶあんの大福を包み込んだもので、さくさくパイと大福の絶妙の楽しみを、と添えられている。

○クロワッサンにつぶあん ホイップクリーム添え ドリンク付き(モーニング10時〜13時)――さくさくクロワッサンとつぶあんの相性抜群――とある。

いずれも子ども達に和の餡に慣れ親しませようと工夫していることがうかがえる。 夏は期間限定で
○いちごミルク
○ブルーベリー氷――ふわっと雪がとけるよう、とある。
他に、○恵那栗氷(恵那産の栗を使用したかき氷) ○マンゴーミルク などなど。
売店では、ならさんぽ(抹茶あん入りのまんじゅう)、お豆さん、富のほうせき(フィナンシェ、仏風バターケーキ)、どらやき数種類(小豆あん、桜あん、皮に蓬(よもぎ)を混ぜ込んだもの、クリームとあんを混ぜたもの)などなど。

女性職員の応対もすがすがしく、隣接の駐車場も結構広く取られている。 品よく、程よい甘さの美味しいお菓子を、和風の邸宅で落ち着いて楽しむ、グループでもぜひ立ち寄ってみたい甘味処であった。

山崎 八重



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