大和当帰


1月21日は大寒。暖かい冬のせいか、少し寒くなっただけでもその反動で余計に体が冷えるようである。冷えは万病の元。冷え性に効く良薬が奈良県から生まれた。中将湯や命の母をご存知だろうか。中将湯は明治に「津村重舎 ・現(株)ツムラ」が、命の母は「笹岡省三・現(株)笹岡薬品」が江戸幕末に世に出した。いずれも宇陀市出身者である。共に当帰や芍薬などの生薬を主にした婦人良薬で、女性保健薬の代表ブランドとして今も長年親しまれている。
この主原料となる当帰(アンジェリカ)の根は、セリ科、シシウド属多年草の植物で、女性の健康を支える生薬として世界に知られている。当帰根は、冷え性、血行障害、強壮、鎮痛薬などに多くの漢方薬として処方され、当帰の中でも、大和当帰が最も薬効に優れていて、江戸時代にはこの大和当帰が五條市大深地区で多く栽培されてきたことから大深当帰と呼ばれていた。しかし40?50年前より大深当帰の栽培農家が減少し始め、代わりに北海道産の北海当帰が台頭した。その後、大和当帰の種子を中国で栽培して、安価な当帰を逆輸入するようになり、国産大和当帰は幻となりつつある。現在、当帰の原料は中国産が65%を占めている。近年、国内の健康志向ブームで漢方薬の需要増加の影響で、高品質な大和当帰の原料確保が難しくなってきた。こうした状況から、奈良県では古くて新しい、ヘルシーで魅力ある生薬の特産品・食品の開発、啓発が始まった。「漢方メッカプロジェクト」で官民双方からの新しい取り組みだ。県内での当帰の栽培は、宇陀市、五條市、高取町、葛城市でも始まっていて、それぞれの産地で生産量を増やしている。

葛城市の大和薬草株式会社代表 住野弘明さんも大和当帰栽培農家の一人だ。秋に訪れた山麓の農園には当帰の尖った葉が勢いよく繁っていた。当帰はセリのような独特な芳香で、リグスティラードやブチリデンフタライドと呼ばれる機能性成分が主成分で香りが強いほど薬効があると言われている。根は3年宿根の大きくなったものが価値があり、住野農園では今年2年目で来年の収穫を待っている。「根」は生薬で、薬事法で一般に売ることはできないが、「葉」は食用として利用できるので、薬膳料理などの飲食や加工用食品に注目されている。

住野農園では26年に大和当帰栽培と大和当帰葉の加工品開発事業で国の6次産業総合化事業計画認定を受け、大和当帰葉の加工品開発を推進している。開発中の商品は、「やまと当帰葉の粉末ドレッシング」「やまと当帰葉入りサイダー」「やまと当帰葉入りのど飴」「やまと当帰葉入りグミサプリ」で、いずれもこの春の販売をめざしている。 やまと当帰葉の粉末ドレッシングは、大和当帰葉を約30%使用した香り高い商品で、野菜サラダや、焼肉やスープにも良く合い女性にも高評価だ。商品の原材料は、大和当帰葉パウダーにハーブ、塩、鶏ガラスープで調味されていて一味違う万能調味料となっている。このドレッシングを使うと不思議に汗が滲んでくる。どうやら、当帰の持つ機能性成分のせいらしい、体が温まる所以である。ラーメンやスープに使うといっぺんに風邪が治りそうである。その他の商品もすっきりとした味で嫌味がなく、ほのかに当帰葉の香りを効かせた万人受けする商品に工夫してある。「当帰葉は体によいが、商品は美味しくなければ長続きしない、普通に日常に食べていただける商品づくりが大切だ。」と住野さんは言う。

そんな大和当帰葉を使った料理は、酪農カフェ「酪」でも食べるとことができる。「やまと当帰葉入りのランチ」鶏モモステーキと野菜サラダ、野菜スープ、ジェラートのセット。いずれもやまと当帰葉を使った体に良いものが提供される。観光の途中に是非、立ち寄られてはいかがだろうか。

酪農カフェ「酪」
葛城市山田110
080-5714-0251
<平日のみの限定で1日2組以上、前日予約が必要。>

木村 隆志



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