今井町の古民家でおいしい薬膳料理
〜古代奈良以来の「医食同源」を味わう〜


春爛漫の候だが、季節の変わり目ともあって体調が気になるころでもある。
古代奈良に伝わった漢方では、「医食同源」として、健康の源は食べ物にあるという。橿原市の今井町に、薬膳料理を提供するお店があるということで訪ねてみた。

近鉄八木西口駅から南西へ徒歩3分、飛鳥川に出て蘇武(そんぶ)橋を渡ると、タイムスリップした江戸の町並みが現れる。更に10分、お食事処「やくぜん」に着いた。
インターホンを押し、中へ入ると、我が家に帰ったような玄関。「こんにちわ!」と声をかけると、山田店長が迎えてくださった。

店は漢方薬局の経営で、代表の中岡富男氏に開設の動機を伺った。
「母体は大成漢方薬局で、昭和43(1968)年開業以来、相談の出来る漢方薬局として、個人に合わせた薬を提供してきた。

自分は予防医学の観点から、「食事、運動、健康、病気の知識を自ら得ることによって、自分の健康は自分で守れる!薬は最後の手段だ」と思って事業をしてきた。
そんな折、橿原市から今井町の建物の民間活用の話があり、これを拠点として住民やかんこうきゃくの方々に、何らかの形で思いを伝えたいと、平成21(2009)年、漢方薬局直営の「健康くらぶやくぜん」を設立した。
特に「やくぜん」は、四季折々の酵素を含む薬膳料理を、漢方薬局直営の強みを生かし、見た目に鮮やかで、食べやすく、おいしく、そして身体が喜ぶものに仕上げようと日々努力を重ねている。
1人でも多くの方が、おいしく食べ、運動し、健康に暮らすヒントを得て「こんな所があるんだ、来てよかった」と思ってくださることを願い、おもてなしをしている」とあつくかたってくださった。

「では早速、お料理を」と山田さんから説明いただく。
まず、お茶は「タイセイヨウ(大青葉)茶」。免疫力をあげ、熱や発疹を伴う感染症、麻疹、流感、肝炎等によい。
おかきは「えん麦(からす麦)」で、骨粗しょう症などによい。
料理は「おまかせ御膳」を選ぶ。
付け出しは、「高麗人参のひげの天ぷら」(疲労回復)、ご飯は「ハナビラタケ」(免疫力、抵抗力を上げる)ご飯。吸い物は「ワカメと湯葉」。
三種盛りは「さつま芋のレモン煮、春菊とエノキの生麩巻き、ほうれん草のナムル松の実和え、切り干し大根と帆立、紅花のネギ油和え」。
小鉢は「金針菜の炒め煮・人参、黒くらげ、糸こんにゃく、セロリ、切り干し大根」。女性に嬉しい。
次の小鉢は「里芋と小海老のあんかけ」。主菜は「白身魚の素揚げの香味(草根木皮)ソースかけ」(※草根木皮とは「陀羅尼飴(だらにあめ)」原料の梅霊芝(れいし)、キハダの根、甘草(カンゾウ)等)。
揚げ物は、セロリと湯葉の天ぷら、豆腐のテリーヌ、長芋のバター醤油焼き菊花添え。
香の物は、大根の千枚漬け柚子味。デザートは「だらにぜりー金粉のせ」で、ほろ苦く、とてもおいしい。
飲み物は、「クレオパトラ(豆の名称)コーヒー」、上品で飲みやすい。料理のだしは、10種の生薬とカツオと昆布の補中益気湯(ほちゅうえききとう)使用。

おいしいものを頂いて、身も心も元気になれるとは、なんと素晴らしい料理だろう。自然と人間の調和の中に、健康があるのだ。古代からの人間の知恵に感謝しつつ、家路をたどった。
お食事処「やくぜん」
橿原市今井町4丁目11-30
0744-20-3266
営業時間は午前11時から午後4時、定休日は火曜日。

萩原 美智子



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