「地牛乳」を使った新メニューの開発と販売


701年、大宝律令では、官制の「乳の戸」という酪農家が設けられ、天皇へ牛乳を供御された。余乳は「酥」と、さらに精製した「醍醐」へと加工されたと文献は伝える。 国内の酪農が細り、バターの品薄が深刻とのニュースに、その昔、渡来人が伝えたとされる牛乳の歴史を紐解いてみた。今や牛乳もバターも日本人には欠かせない。だがもとになる生乳の生産は、近年、下降の一途をたどる。酪農家の経営は危機的と伝えられる。手間ひまかけて、水より安いと言われる牛乳の先行きが見えない。飼料の高騰などに加え、TPPで安い外国産が入ってくる不安がさらに、のしかかる。

大正時代に設立されたと言われる忍海酪農組合でも先行き不安から後継者が育たず、廃業を考えている酪農家もあるようだ。 危機的な地元酪農の活性化の役に立ちたいと立ち上がったのが地元在住の住野秀樹さん。地牛乳を使っての新商品・新メニューの開発と販売を目的に古民家を活用した酪農カフェ「酪」を2年前にオープン。20年前まで葛城山麓で酪農を営んでおられた農家古民家を借り 農家の外観そのままに、店内は古い母屋を吉野材で少し手をかけただけの手づくりのリニューアル。

オールドファンには懐かしいsansui(山水電器)のアンプやcoral(コーラル)の手作りスピーカーも今も変わらず現役で鳴っている。「古い家で寒いところへ、ようこそ。」と、店主の住野秀樹さん。 木のぬくもりと薪ストーブとオールドファンの心を癒す空間がお客を温かく迎えてくれる。店は名の通り地牛乳をつかったカフェメニューが売りだ。「酪」のおすすめは何と言ってもプリン。今、人気プリンのほとんどが、とろける口溶けのよいものが主流となっているが、「酪」のプリンはあえて硬めで濃厚な味を売りにしている。なるほど硬めだが、ほんの少し噛み砕く味わと、濃厚な牛乳の味が絶妙にマッチ。幸せ感いっぱいのおいしさ。こんなプリンは初めて。ジェラートも濃厚で牛乳そのもの味でおいしい。自家焙煎のコーヒーも香り高い。パスタやカレーなどの軽食も用意されているので、一度ランチに訪れてみられてはいかがだろうか。 なつかしい、癒しの店内がオールドファンにはうれしい限りだ。 今はまだ口コミで、自転車やバイクのツーリング仲間に静かに知られているだけのようだが、知る人ぞ知る店である。 少しでも酪農家を勇気づけるこの店の取り組みを、私たちは応援したいし、益々の繁盛を期待したいと思う。 酪農もTTPの市場原理の大海に放り出されたとき、この国の農や食は大丈夫か。案じる声は消えていないが、今のバター不足が将来の予兆でない事を願う。

お問い合わせは
酪農カフェ「酪」葛城市山田310
080-5714-0251
定休日毎週火曜日

木村 隆志



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