磯城野高校“しきの彩(いろどり)”−農産物直売所ー


大和の国中(くんなか)、奈良盆地は、かつての米の反当たり収穫量が日本一であった。高い農業技術を背景に、米に限らず多種多彩な作物が栽培されていた。 盆地の最中(さいちゅう)、近鉄田原本駅から西に5分ほど歩いた所に県立磯城野(しきの)高校がある。弥生時代の農耕集落で知られる“唐古遺跡”の南側である。

磯城野高校は、平成17(2005)年に県立田原本農業高校と県立北和女子高校が統合され、今年で創立10年目を迎える。農業系(生産科学科、バイオ技術科、環境デザイン科)と家庭系(フードデザイン科、ライフデザイン科、ヒューマンライフ科)からなる実践型専門高校である。 広大な敷地には、実験・実習棟、農場、温室・ハウス、果樹園、養鶏場などがあり、「実践型教育」を徹底した時代に必要なスペシャリストの育成を目指している。

今回紹介する「しきの彩(いろどり)」は、構内で収穫した農産物や鶏卵、生徒たちが作ったジャムや菓子などの直売所である。 正門から入って、生徒たちが築した美しい庭を通り抜けた所の、本館と北館をつなぐ渡り廊下で「しきの彩」を開く。毎週火曜日午後3時40分に開店、地域の人たちにも解放されている。 同校の教育指針である“起業家意識の向上を目指した実践教育”の一環として、農業系生徒全員で構成する農業クラブが、“疑似株式会社「しきの彩」”を組織し、岸田栞璃さん(3年生)が社長を務める。真井順也先生(作物学)が運営をサポートする。

当時、店頭係を務めた生徒たちは、柿色の揃(そろ)いはっぴ姿で、地域の人たちとも交流して、楽しそうに採りたての農作物を販売していた。 この日に販売されたのは、千筋水菜、大和まな、ホウレンソウ、チンゲン菜、ナス、パプリカ、ニンジン、富有柿、イチゴジャム、珍しい鶏卵(シャモ、名古屋コーチン、ニューハンプシャー)など。フードデザイン科の生徒たちも、自慢のチーズケーキを作って販売に加わった。 開店前から近所の常連のお客さんたちは、並んで品定めをしながら待っていた。生徒たちも三々五々集まってきた。開店と同時に新鮮な野菜は売り切れ、20分ほどで店を閉じた。 私が買った、水菜、チンゲンサイはシャキッとしていて柔らかく、生のままでも野菜のうま味がしっかりあり、軽く炒め、塩味だけでも大変おいしかった。チーズケーキもレモンとチーズの風味のバランスが良く、手作りならでのクリーミーな味わいであった。

校長の木田一芳先生は、「しきの彩」について次のように語られた。「単なる直売所ではなく疑似株式会社に仕立てたのは、生徒たちが自主的に創意工夫してお客さんに喜ばれる“品質の高い農産物”を販売することがビジネスの原点であることを体得して欲しいから。生徒たちに“伸びしろ”は、まだまだある。努力して能力を更に磨いて欲しい」と優しく熱く語られた。 恒例の「ホリデーイン磯城野」が11月15日に開催される。市内に開放された、磯城野高校の秋祭りである。手塩にかけた旬の盛りだくさんな野菜も「しきの彩」で販売される。


的場 輝佳



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