奈良であの「近大マグロ」を食する


古代の奈良の遺跡からは、貴族・豪族たちが海産の魚も食していたという証拠が多数発掘されている。「奈良には、海がない。だから海産物が無い」ということは当たり前の話だが、「奈良には海の特産物がある」と考えられなくもない事実がある。実は最近話題の、世界で初めて完全養殖に成功したクロマグロ(以下近大マグロ)の事である。 近大マグロは、和歌山県串本町の水産研究所大島実験場で養殖されているので和歌山産だと思われているが、本部である近畿大学農学部が、奈良市の富雄駅近くにあることはあまり知られていない。従って、こじつけのようだが「近大マグロは奈良産だ」とあながち言えなくもないのだ。

実は、私は近大マグロが初めて孵(ふ)化に成功した昭和54(1979)年に、近畿大学農学部に入学した。 先輩たちからよく近大マグロの話を聞かされていたが、当時はそんなに画期的で重要なことだとは、思いもしなかった。今もその先輩たちは、大島実験場や奄美大島の奄美事業場で働いていて、尊敬をもって接している。 近大マグロの特徴は、「完全養殖」である。
普通「養殖マグロ」と言われているものは「蓄養マグロ」で、稚魚を海で捕獲し、養殖したものである。 それに対し「完全養殖」とは、まず天然クロマグロの稚魚を成魚に育てて産卵、受精させる。第2世代から再生産のサイクルを確立した技術である。これが世界で初めて成功した「完全養殖の近大マグロ」なのだ。

味は、当初は脂身が多く、全身トロと呼ばれ、脂が乗りすぎて独特の脂臭さがあったが、今では赤身3割、中トロ5割、大トロ2割とバランス良く取れるようになってきている。 安全性から言っても、養殖魚は餌に混ぜられた抗生物質が多く含まれているというイメージがあるが、近大マグロは「いけす」が大きいうえに餌と飼育技術の向上により、抗生物質は使われていないと聞いている。 また、天然マグロでは高濃度のメチル水銀が含まれていることがよく知られているが、近大マグロでは、食物連鎖によるメチル水銀の濃縮が少なく、高い安全性が確認されている。

奈良市でも別記店でメニューとして出しているので、安心安全の「奈良産」近大マグロをぜひ一度、この奈良の大宮で食べて古代の「大宮人」の気分を味わってみていただきたい。

「郷土料理居酒屋しきしき」
奈良市、近鉄奈良線新大宮駅南側すぐ
0742-36-8490


増井 義久



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