こだわりの牛乳を届け続ける植村牧場


8月の猛暑の中、奈良市の市街地に隣接する植村牧場を訪ねた。入り口では牛のオブジェがお出迎え、遊園地のような雰囲気にテンションが上がった。

1883(明治16)年の創業から四代目となる、代表の黒瀬礼子さんにお話を伺うことができた。

植村牧場といえば、地元食材の「奈良漬」「大和まな」「小しょうが」「あすかルビー」を使った「アイスもなか」の開発で、メディアに取り上げられることが多い。

だが、黒瀬さんは「うちの主流商品は低温殺菌(75度で15分加熱)の牛乳です。毎日休まず、700〜800本の牛乳を近隣に宅配しています。

そのほか奈良ホテルや喫茶店、レストランへも材料として納品しています。アイスクリームなどの加工品の製造は、余剰の牛乳があるときだけに行っています」とのこと。 私も低温殺菌の牛乳を飲んでみたが、なるほど普段飲んでいる紙パックのUHT殺菌(135度で数秒加熱)乳と一味違う、牛乳本来の風味を強く感じられるものだった。代々受け継いで来られた「健康な牛を育てることが、おいしい牛乳を造る」という牧場のこだわりを感じた。 30頭の牛たちは熱い夏が苦手そうだが、創業当時からの木造茅葺(かやぶ)きの牛舎でゆったりと休んでいた。

牛たちは、天気の良い日は運動場へ出て、お日様をいっぱい浴びているそうだ。
植村牧場は障がい者の雇用を積極的に行っておられ、現在14人の障がい者が働き、そのうち10人は黒瀬さんと寝食も共にしている。重度の障がいのある方たちが、ここでは長く働き続けておられ、一番ベテランは35年も勤務されている。 黒瀬さんは「いろいろなことができなくてもいい。それぞれの仕事のプロになりなさい」と指導され、今では搾乳を一人でこなせるようになった方もいる。

これらの取り組みは、平成26年度農林水産省の「地域の隠れた魅力を活性化につなげよう『ディスカバー農山漁村の宝』」で最良23事例の一つに選定されている。6月10日に首相官邸にて選定証授与式が行われ、安倍内閣総理大臣、林農林水産大臣らが出席する交流会に黒瀬さんも参加されたそうだ。 10年前からは牧場入り口にカフェレストラン「いちづ」をオープン。11時30分からのランチタイムには「レディースランチ」「牛乳カレー」「ビーフシチュー」などのランチメニューを、また14時からは「手作りアップルパイ」「いちづ特製パフェ」「ソフトクリームあんみつ」などのデザートをいただくことができる。

シェフは奈良ホテルで15年の料理経験を持つ。店名の「いちづ」は、酪農ひとすじ一途に、という意味を込めて映画監督の河瀬直美さんがつけられたとのこと。 また、見事な看板の文字は書道家の紫舟さんが書かれたものだそう。

取材に行った日はちょうど定休日だったため、残念ながらランチをいただくことができなかったが、今度はぜひ、のどかな牧場でランチをいただこうと思う。

植村牧場株式会社 〒630-8102 奈良市般若寺168
電話0742-23-2125、FAX 23-2126
URL:http://uemura-bokujyo.co.jp/


増井 義久



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