楽しくておいしい「大和ちゃんこ」
〜新しい奈良の名物料理にして行こう〜


このコラムでは、奈良の各地で地場の食材の生かし方、食べ方の工夫などが見られるものを掘り起こして紹介することに努めてきたが
このたび当会で、その流れに見合った料理を、まことに僭越ながら提案し、各地に広げていただいて奈良の名物料理の一つにしていただこうということになり、その名を「大和ちゃんこ」と命名した。少し季節外れの感もないではないが、紹介したい。

ちゃんこは明治の末ごろから広がった相撲部屋での鍋料理だが、鍋料理は簡単かつ大量に作れ、栄養バランスもよく、加熱による衛生適合性、鍋を囲む連帯感醸成などから、古くからの日本に定着している料理である。
実は、大和・奈良はこの「ちゃんこ」と強い縁があるのである。

まず、大和は「日本書紀」にある野見宿禰と当麻蹶速の物語から「相撲の発祥の地」ということができ、相撲には深くて古い関係がある。 次に、相撲では四つん這いになることは負けを意味し、四足の動物より2本足の鶏肉がゲンが良いとされ、魚とともに利用されてきたようだが(近年では牛豚も使われるようだ)
大和では推古天皇時代の飛鳥で「唐風若鶏料理」の広がり、近世での近畿における「大和かしわ」の隆盛があり、奈良県での「大和肉鶏」開発となった経過もあって、鶏肉の歴史は古い。
さらに、奈良は伝統のある吉野葛や桜井のはるさめをはじめ、「宮廷での野草栽培」による“野菜作りのはじまり”といえる歴史もあり、「結崎ネブカ」「千筋水菜」「宇陀金ごぼう」「大和真菜」等々
県による「大和野菜」認定も含めて独自の野菜栽培も広がり、鍋の食材には事欠かない。

また、鍋には欠かせない「豆腐」についても、日本で最初の文献記載は1183年の春日神社の供物の中での記載といわれ
室町中期の書物にも京の都での奈良の豆腐売りの記述などもあって、中国からまず奈良に豆腐が伝わり、各地に広がったものと考えられている。

最後に、独自の提案として、鍋の仕上げに入れる食材に丸餅を上げたい。餅は「力餅」とも言われるが、白い丸餅は「白星」である。
さらにこれを、大和特有の「きな粉雑煮」に着目し、「餅を取り出してきな粉にまぶして食べる」と、見事「金星」になるのである。なんとも縁起のいい、楽しくておいしい料理になるではないか。
これを当会と提携する奈良市新大宮の郷土料理居酒屋「しきしき」(および近くの大和肉鶏専門店「物集女」)にて提供する。奈良各地での変化は大いに結構なので、ぜひ奈良県中で「大和ちゃんこ」を広めていただきたいものである。

お問合せは
*郷土料理居酒屋「しきしき」 近鉄新大宮駅より南側徒歩3分 0742-36-8490 「大和ちゃんこ」は要予約

瀧川 潔



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