地場野菜の和食創作料理 このたび、和食がユネスコの無形文化財の登録され、和食文化が世界に発信されることを心より喜びたい。 そこで、早春の1日、自然の恵み、地元の新鮮野菜を中心にした和食創作料理を提供している桜井市高家(たいえ)の「田舎茶屋千恵」を訪ねた。 ミシュランの1つ星をもらったこの店、滋賀県から移設された古民家は、高家の里にしっくり馴染んでいる。西側には大和平野が広がり、真正面には大和三山の1つ耳成山(みみなしやま)が見える。玄関左には唐箕(とうみ)が座り、左手壁には、大きなしゃもじがかかっている。 中に入ると「お帰りなさい」と女将の声、つられて「ただいま」と言ってしまう、我が家に帰ったようだ。囲炉裏の間に通され、昔こんな所で食事をしたような気がした。 さて、食事は3コースあるお昼のおまかせ膳の「六品」を注文。囲炉裏の縁には、紙のランチョンマットに一言、「おかえり、体の具合どないや?…父母」。遠く離れた子どもたちへの問いかけか、父母の心情が伝わってくる。箸置きの「ねこ柳」にも、季節を感じる。こんなやさしい人たちから生まれる料理、楽しみである。 料理が運ばれてきた。まず先附(さきづけ)。菊の花のように型どられたふろふき大根。大根は、ご主人が横の畑で作られたそうだ。やわらかくてとてもおいしい。次は野菜。地元の新鮮野菜とタニシ、海老などの盛り合わせで季節感があり、箸をつけるのがもったいないくらいだ。 次にお造り。中でも本葛(くず)の造りは舌に心地よい絶品だ。次は揚げ物、海老と近くで採った野草で、菊芋、野蒜(ノビル)、藪萱草(ヤブカンゾウ)の新芽、ヨモギ、ミツバ。菊芋は糖尿病予防、野蒜は食欲増進、整腸、藪萱草の新芽は利尿作用、風邪、不眠症、ヨモギは健胃、貧血、ミツバは、造血、血行促進、不眠に良い等々、教えてもらいつつ、ザルに入った現物を見せてもらった。 それぞれ味をかみしめながら頂き、体に中に良い物を入れたと満足。 次はご飯。お米はヤマトの「ヒノヒカリ」・コシヒカリと黄金晴の交配で生まれた。かまどで炊いたご飯がおひつで出てきた時は感激、つややかで、匂いがとても懐かしい。 そして汁物。白身魚の団子に菜の花のおすまし。香物は二十日大根、キャラブキ他6種盛。 千恵さんでのゆったりとしたひと時は、忘れかけていた幼い頃の自分を思い出す。おいしいものと懐かしい風景を食べさせていただき、感謝感激。おかみさんの「行ってらっしゃい」に送られてお店をあとにした。 ミシュラン1つ星の千恵さん、そして説明いただいた錦井力(息子)さん、御馳走さまでした。
【提供店】「田舎茶屋千恵」桜井市高家 萩原 美智子 |