真に美味しい野菜を求めて修行35年の料理人が逝きついた先〜専属農園


年の瀬も押し迫ったある昼時、奈良町界隈の元興寺西側にある「旬彩ひより」に足を向けた。 店は古い町並みに溶け込むようなオシャレな外観で、店内は広く、シックな赤を基調としたシンプルながら高級感が漂う。

また、オープンキッチンである。店主は、白浜の「ホテル川久」系列の西の京「創作料理 萬京やまと」で長らく支配人を務めていた方である。 6年前、今の店を構える時、直売所等で野菜探しから始まった。
その時、ある人から助言を得たのであった。それは「野菜はたくさんの改良品があり、市場に出回っているのは作りやすい、短期収穫、収率性を追求した品種で、本当に美味しい品種かどうかは疑問」と。

それを聞いて、じゃあ自分で専属の農園を持ち、効率性、流通性に拘らない、本当に美味しい品種の野菜を農業のプロの人に作ってもらおう、となったのである。 こうして、やっと辿り着いたのが、田原本にある専属農園の野菜であった。勿論店主は、定休日には農園に貼りついている。さて、きれいな器に盛られた懐石料理は、たちまちテーブルを占領した。

@古代米といわれる赤米、黒米、幻の緑米が入ったご飯。
A揚げ物は、珍しいターサイと外はカリカリ中はトロトロの山芋の磯部揚げ。また、ゴボウの風味がするのに、食管がまるで繊維を感じない天婦羅。これは一体何?それは滝野川ゴボウと言って、江戸時代、参勤交代の大名たちは帰国する際、必ず滝野川(東京都北区)で御坊の種を買っていたようで、 長いゴボウ(約1メートル程)の原種である。これを当農園(関東は土壌が柔らかい)で作るには、畑でなくて田圃で作っているとのこと。
B和え物は3品で、大和伝統野菜の大和キクナと富有柿の白和え。同じく伝統野菜で幻の「結崎ネブカ」のカラシ酢味噌和え。湯葉と京菜、色も鮮やかなオレンジクイーン(白菜)の利休和え。そして、伝統野菜、大和真菜と油揚げの煮びたし。
C味丸大根と水菜、キビのあんかけ。何と大根でも他に、丸大根、普通の大根とそろえ、料理によって使い分けているのである。
D里芋の揚げ出し
Eしろ菜入り白みそ仕立ての椀物。
F白菜、シメジ、ニンジンのナマクリーム仕立てのスープ。
G最後にデザートとして、特製わらびもち。

以上、いずれも今が旬の野菜ばかり(10種類以上)。これらが長い修行を積んで来られた料理人の手にかかれば、箸が進むのも当然。ドリップも含め、跡形もなく全部頂いた。 思うに、これだけの野菜を揃えるには相当、野菜に対して強い思いがないとそろえられるものではない。 メニューには他に大和牛、大和肉鶏、イワナ等いろいろある。
もしお店に行かれた時、気になる野菜があれば、気軽に尋ねると新しい発見があり、一層料理が楽しく感じられることと思います。

「旬彩ひより」
奈良市中新屋町26 鶉屋倶楽部1階
営業時間 11時30分〜14時30分。17時〜22時。定休日火曜日
0742-24-1470

山根 清孝



▲ページトップへ