ならきたまち界隈のオシャレなワインショップ


近鉄奈良駅前、行基菩薩像が立っている広場から、登大路をわたって石畳のモダンな東向き北通りを100メートルほど進むと、東西方向に古い町並みが続く鍋屋町に出る。かつお節の香りが漂う「西口鰹節商店」あたりから東に向かうと、河原屋根の無香に若草山が眺望できる。
この鍋屋町の通りの南側、奈良女子大正門への三つ角の手前に、昨年7月にオープンしたワインショップ「ワインの王子様」がある。奈良で最初のワイン専門店である。

この店は、もともと「杉田商店」で、昔から酒類を商っていた由緒ある酒屋さん。付く200年の町屋風家屋である。どっしりとした瓦屋根の軒下には、かつて造り酒屋であったことを示す「杉玉」(酒林)が吊り下げられている。 この店のオーナー粂(くめ)宏明氏は、天理市生まれ。灘の履く釣り酒造で13年間勤務した後、天理でリカーショップを経営している、お酒に詳しいスマートな青年実業家である。日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザーでもある。 繁華街から離れた落ちる板ところで、静かにワインを楽しむ空間を粂さんは探していた。NHK、県庁、奈良女子大などが隣接し、奈良市が平成15年に設定した"きたまちまちかど博物館"界隈に魅了され、りそうの場所を思い、店を開いた。 「ワインの王子様」は、ワインをこれから飲み始める人にも、"ワインは難しいものではない、親しみを持ってほしい""誰でも気楽に読めがときめく気分になれるように"と、粂さんの願いを込めて付けられた名前で、レストランデモワインバーでもなく、ユニークな「ワインショップ」である。ワインを試飲して、気に入ったワインを購入する店である。

町屋風家屋の趣をそのまま残した雰囲気のなかで、ワインを楽しむことができる。玄関から入ってすぐ右奥には座敷がしつらえてあり、框(かまち)に腰を掛け、畳に座ってワイングラスを傾けるのもオシャレである。 また、試飲コーナーもあり、リーズナブルなものから、やや値段の高いものまで16種類のワインが用意されていて、500円でワイングラス5杯前後しいんすることができる。若い女性にも人気である。 お店のひとに丁寧なアドバイスを聞いて、ワイン通になった気分にもなる。ワインセラーには、世界各地のワインが所せましと並べられている。 残念ながら、奈良屋ワインは置かれていない。奈良にはワイナリーが無いからである。日本酒発祥の地奈良に、地元ワインを求める声は強い。

県の話によると、食に関係する人たちによる異業種交流の中で、奈良ワインを造ろうとの動きがあり、市内の不耕作ワイン用ブドウの苗木を植えて、数年後の収穫をめざしているとのことである。 正倉院御物(ぎょぶつ)にワイングラスを想起させる「瑠璃杯(るりのつき)」がある。奈良時代に貴族たちがワインを楽しんでいたとの記録はない。 しかし、はるか西方の国からもたらされたワインと地酒で、古の奈良の都人が酒宴を楽しんでいたと想像してみるのも楽しい。 荷が暮れて、「ワインの王子様」の格子からこぼれた光が、鍋屋町の夜道を明るく照らしている。

的場 輝佳



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