ならきたまち界隈のオシャレなワインショップ
近鉄奈良駅前、行基菩薩像が立っている広場から、登大路をわたって石畳のモダンな東向き北通りを100メートルほど進むと、東西方向に古い町並みが続く鍋屋町に出る。かつお節の香りが漂う「西口鰹節商店」あたりから東に向かうと、河原屋根の無香に若草山が眺望できる。
この店は、もともと「杉田商店」で、昔から酒類を商っていた由緒ある酒屋さん。付く200年の町屋風家屋である。どっしりとした瓦屋根の軒下には、かつて造り酒屋であったことを示す「杉玉」(酒林)が吊り下げられている。
この店のオーナー粂(くめ)宏明氏は、天理市生まれ。灘の履く釣り酒造で13年間勤務した後、天理でリカーショップを経営している、お酒に詳しいスマートな青年実業家である。日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザーでもある。
繁華街から離れた落ちる板ところで、静かにワインを楽しむ空間を粂さんは探していた。NHK、県庁、奈良女子大などが隣接し、奈良市が平成15年に設定した"きたまちまちかど博物館"界隈に魅了され、りそうの場所を思い、店を開いた。
「ワインの王子様」は、ワインをこれから飲み始める人にも、"ワインは難しいものではない、親しみを持ってほしい""誰でも気楽に読めがときめく気分になれるように"と、粂さんの願いを込めて付けられた名前で、レストランデモワインバーでもなく、ユニークな「ワインショップ」である。ワインを試飲して、気に入ったワインを購入する店である。 県の話によると、食に関係する人たちによる異業種交流の中で、奈良ワインを造ろうとの動きがあり、市内の不耕作ワイン用ブドウの苗木を植えて、数年後の収穫をめざしているとのことである。 正倉院御物(ぎょぶつ)にワイングラスを想起させる「瑠璃杯(るりのつき)」がある。奈良時代に貴族たちがワインを楽しんでいたとの記録はない。 しかし、はるか西方の国からもたらされたワインと地酒で、古の奈良の都人が酒宴を楽しんでいたと想像してみるのも楽しい。 荷が暮れて、「ワインの王子様」の格子からこぼれた光が、鍋屋町の夜道を明るく照らしている。 的場 輝佳 |