葛城高原の「かも丼」
鴨族の歴史と地場の食材が不思議にマッチ!


お水取りも済んでいよいよ暖かくなる季節だ。まだ風は寒いが、陽光降り注ぐ一日、高原の歴史散歩と飛びきりの「ご当地丼」を楽しみたいと御所の葛城の地を訪れた。
この地域は、日本最古の豪族とされる葛城氏の活躍したところだが、ここはまた古代の天皇と関係の深い日本最古級の鴨神社を代々受け継ぐ鴨族の発祥の地でもある。葛城鴨神社は高鴨神社、下鴨(鴨都波)神社を双璧とし、中鴨(葛城坐御歳)神社、長柄神社を含め関係4社が金剛山、葛城山の麓に並び、全国に分布する鴨(加茂)神社の源であると言われる。

高鴨神社の主祭神、阿遅志貴高日子根命(あぢすきたかひこねのみこと)の別名は迦毛之大御神(かものおおみかみ)で、大御神のつく神は記紀では天照(あまてらす)、伊邪那岐(いざなぎ)との三神のみである。「かも」は「かみ」の語源の一つともいわれるようだが、鴨の字をあてるどのような経過があるのか興味深い。大和は、豊芦原といわれる湿地帯で、飛鳥時代等の灌漑事業によるものを含めて池沼が多く、万葉集等に水鳥を詠んだ歌も多い。食文化から見れば鴨は重要な食鳥であり、奈良のおん祭での「懸鳥の儀」にもあるように、神に鴨や雉を供えるのは、御馳走を先ず神にささげて感謝する自然な流れなのであろう

葛城の古道をたどって歴史にひたった後、ケーブルで葛城山に登り、眼下のまほろばの地と青垣の山々を堪能して、目指す葛城高原ロッジの「かも丼」をいただくことにした。 鴨は鍋が定番であるが、昼食には丼の方がぴったりくる。ロッジの代表の細川清利さんに話を伺った。ここの鴨肉は葛城山麓で合鴨を飼育している棚田農園のものを使用している。合鴨は鴨に脂を付けやすいアヒルを交配したもので、程よく脂の乗ったおいしい鴨肉に仕上がる。お米は奈良県一といわれる吐田(はんだ)米の地元の地域で生まれた「金剛米」を使用、さらに地元名産の粘りの強い大和芋を使う、なかなかぜいたくな丼である。

まず鴨肉を炒めてから特製のタレにからめ、熱々のご飯の上にレタスをおき、鴨肉とすりおろした大和芋、刻みのりを彩りよく並べ、真中にこれも葛城山麓で飼育された「美人卵」の卵黄を乗せる。薬味として刻みネギ、わさびが添えられる。鴨族の始祖、大鴨積は朝廷から「君」の姓を賜与され鴨君と称されたというが、まさに「かもきみ丼」である。 栄養たっぷりで、ハイキングのあとのおなかにはありがたい、少しこってり気味の味わいのあるおいしい丼であった。食事のあとちょっと足を延ばして、麓の「かもきみの湯」に入って帰路についた。いや大満足の1日であった。 これからのうららかな一日に、ぜひ歴史と「かもきみ」を味わっていただきたい。
お問合せは
葛城高原ロッジ 御所市櫛羅 0745-62-5083 かも丼 1,000円
*4月7日奈良公園で開催の「B級グルメ奈良決定戦」にも出店。(試食価格300円)

瀧川 潔



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