蘇った「伝説の結崎ネブカ」その復活物語〜手づくりうどん店に見る〜


ある寒い日、結崎駅近くに、大和伝統野菜である「結崎ネブカ」がたっぷりと入ったうどん店「美ノ吉」があると聞いて行った。

この伝説とは?「室町時代のある日のこと、一天にわかにかき曇り、空中から異様な怪音とともに寺川のほとりに落下物があった。この落下物は、一個の翁の能面と一束のネギで、村人は能面をその場にねんごろに葬り、ネギはその地に植えたところ見事に生育し、戦前まで「結崎ネブカ」として名物になった・・」
という言う伝説である。(現在「面塚」として寺川のほとりに石標が残されている。)

そのネギは大変柔らかくて、甘く、煮炊きに最適であったが、日持ちの悪さやシャッキとしないその外観から、戦後には次第に大量消費市場から忘れ去られ、ついに消えてしまったのである。
それから50数年、川西町商工会は平成15年に種探しから始め、幻と言われる所以のむつかしい栽培方法を抱えながらも復活物語に取り組んだのである。
お店は普通の構えであるが、店内はまるで「結崎ネブカ」に特化したかのように、写真入りのメニューがずらりと並んでいた。
その隣には6枚程の色紙も貼ってあった。間もなく、煮立った「鍋焼きうどん」が運ばれて来た。ネギの色は鮮やかな緑で量はたっぷりあり、柔らかそうであった。
まずはスープを一口。これが何ともしっかりとした出し汁でこんな美味しい出し汁に出会ったのは久しぶりである。ご主人に聞くと、昆布、ウルメ、いりこ他から出汁をとっているとのこと。
「結崎ネブカ」は予想通り非常に柔らかく甘味があり、長さ5p位に斜め切りされたネギは薬味としてでなく、それはもうシャキシャキと歯切れよく且つ、クセのない具材であった。

また麺は毎日2回程打っており何とも言えないコシがあり、出し汁とネギのハーモニーが心地良かった。
他の具材、海老の天ぷら、椎茸、玉子、油揚げ、鶏肉が有るのも忘れさせるほどの存在感であった。

まさに、主人の手にかかると「伝説の結崎ネブカ」は脇役でなく主役になると思った。またこの時期になると、遠くは静岡、名古屋、他からも食べに来る人もいるようだ。
それはご主人の物静かな中にもある「手づくりうどん」への強いこだわりと地域の特産品への愛情が引き寄せるのであろう。
帰り際、棚には川西町の地場産業「貝ボタン」のパンフレットも置いてあり、まさに地域に根差したお店であると感じた。

磯城郡川西町結崎577-1
定休日は月曜日、営業時間は11時〜20時
電話0745-43-1156

山根 清孝



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