刀根早生(とねわせ)−大和で生まれた良質の渋柿 柿が色づくと、深まりゆく秋を感じる。“柿くえば鐘がなるなり法隆寺”は大和の秋の風景を伝える有名な子規の句。昔から大和は柿の名産地として知られ、10月半ばから12月にかけて収穫していた。ところが、昭和の後期に“刀根早生”が出現して柿農家の経営が大きく転換した。
早い時期から収穫できる刀根早生のお陰で、収穫期間が伸び収入も増えて農業経営が安定したと力強く語った。刀根早生は、剪定、施肥、給水など、丹念に手を掛ければ掛けるだけ収穫が上がり、まるで子供を育てるようだとも語った。代々上平家は西吉野の柿作り農家で、ご両親と奥さんの一家4人がパートさんの助けを得て収穫に汗を流す。大学生の息子さんも後を継ぐとの事で、柿栽培の将来は明るい。柿が終わると梅の栽培に精を出すそうだ。
収穫された刀根早生は、JA奈良県西吉野統合選果場に集められ、直ちに巨大な脱渋棟で二酸化炭素処理(16時間)され、甘柿に変わる。自動化された選果ラインで色・形などを選別して等級別に箱詰めにされ、待機する大型トラックに積み込まれ全国に発送される。刀根早生は、形が扁平で種がなく大変甘くジューシーで果肉が柔らかいと評判が高い。脱渋しないものは、丁寧に干して渋を抜いて手作りの“あんぽ柿”に仕上げられる。
果樹研究会は、一般の人を対象に11月11日「奈良の柿検定」試験を実施する。柿の理解と広報が目的で今回は3回目。また、子規が“柿の句”を作った10月26日を柿の日と定めた。これらは上平さんの発案である。果樹センターは、柿の栽培や新しい商品の開発に務め、柿農家を全面的に支えている。11月の半ば富有柿の収穫が始まる頃、柿の葉が見事に紅葉すると、濱崎さんは語った。 的場 輝佳 |