日本酒の新しい世界 発泡日本酒「ときめき」


新しい年の明け、昨年の苦難を乗り越えて希望の道が開けるよう、心から願う。 さて、日本の新年となると欠かせないのは日本酒である。中国伝来の「屠蘇」は1年の邪気「蘇」を払う薬酒として屠蘇散と味醂等を日本酒にいれたものだが、関東方面を含めて屠蘇散を入れない正月の祝い酒を「おとそ」ということも多い。

日本酒は米を原料とし麹で糖化、酵母で発酵させた酒で、米の伝播とともに日本に広がったと見られる。桜井市の大神(みわ)神社が酒の神として全国に名高いが、上代では「おみき(神酒)あがらぬ神はなし」といわれるように神に供え、皆で飲んだたことが3世紀の「魏志倭人伝」の記述にも見える。ただ記述からは米の酒とは断定できないらしい。

飛鳥時代、宮中に造酒司(さけつかさ)を設け醸造したのは米の濁り酒で、「しろき(白酒)、くろき(黒酒)」が現在に至るまで天皇の新嘗祭で供えられる。その後日本酒醸造は神社から寺院の僧坊に移り僧坊酒となって広がり、鎌倉、室町時代に至って清酒が大量に醸造されるようになった。この代表が奈良市の菩提山正暦寺で、清酒の発祥の地といわれる。「南都諸白」製法は透明度の高い清酒を生み、「奈良酒」は中世日本の頂点となった。

今日の日本では、洋酒、ビール、ワイン等々多様な酒の需要が広がり、日本酒の消費は低迷している。日本酒の伝統を活かして奈良で清酒づくりを担い、春日大社のお神酒づくりも長く携わってきた今西清兵衛商店では、伝統の清酒だけでなく、多岐にわたる需要にこたえるために知恵を絞り、日本酒の新しい世界を切り開く努力をしてきた。

一昨年、奈良女子大学百周年記念の提携事業として、奈良の県花であり、大学の校章にある八重桜の酵母を苦労の末見つけ出しこれで醸造した「清酒八重桜」開発もあるが、ビールの広がりに注目してアルコール度数の低い、全く新しい日本酒を開発することにも挑戦してきた。
ウィスキーや焼酎はアルコール度数を下げるのに水で割るが、日本酒は割ってはとても飲めない。度数は低くても香りのよい旨味のある日本酒を造るために、数ある酵母の中から、アルコールをあまり作らず香りのよい酵母を探し出し、仕込みの方法も変えて、今までの清酒とは全く違う味と香りをもちシュワッと発泡する日本酒が苦心の末出来上がった。

名称は、今西清悟会長が取り組む「クラッシック音楽と酒を楽しむ会」を通じて募集し1位となった「ときめき」が採用された。
日本酒の輸出の際アピールしたところ、仏、米の女性に大いにウケて自信をつけた。日本でも奈良市出身のキンキキッズ堂本剛の応援も受け、若者、特に女性にファンが広がっている。新しい日本酒の展開に大いに期待したい。

(今西清兵衛商店 0742-23-2255)

瀧川 潔



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