子供に大人気 やきそうめん


当初は暑い「霜月の入り」となったが、季節はたがわず、夏はさわやかに胃袋を慰めた奈良名産の三輪そうめんも、「あったかい食べ方」が求められる。その典型は「にゅうめん」だが、若い人や子どもたちには人気がない。そんな中、「ママが作った焼きそうめん」があるというので、奈良市の増井香織さんを訪ねた。

増井さんは、10年ほど前にテレビでそうめんを軽くゆで、炒めて食べる料理を見たことがあり、「子どもたちが好きな焼きそば風に調理してみたらどうかな」と思いい挑戦してみたという。
同じ作るならと味の良い大和鶏のムネ肉と地場の野菜(水菜、ニンジン、玉ネギ、キャベツ、ピーマン)にオリーブオイルを使い、味はニンニク、こぶ茶、塩こしょう、醤油(しょうゆ)で調整して、「焼きそうめん」を作ってみたところ、育ち盛りの3人の子どもたちに大人気、特に末の信仁君(10歳)は麺類が好きで「おいしい!」と大喜び。お父さんも太鼓判を押してくれたとのことだ。

三輪そうめんは「細きこと糸のごとし」で麺線の細さが特徴だがコシがあり、夏のごちそうとして不動の地位にある。そうめんは近年各地で生産されるがやはり三輪は中枢だ。

起源を探ると、奈良時代、唐伝来の「唐菓子」に「索餅(さくべい)」という小麦粉を練ってひも状に伸ばしゆでたものがあり、これが源流と思われる。長い間日本の食文化に揉(も)まれてひもは糸のように引き延ばして寒気に晒(さら)され、そうめんとなる。
鶏肉は一般に若鶏をいうが、これは飛鳥時代に唐の帰化人が広めた唐風料理が始めという。以来大和は鶏肉の産地となり「大和かしわ」として近年まで有名だった。これを元に県畜産試験場が昭和49年、シャモと、名古屋コーチン、ニューハンプシャーの子との間で生んだ味の良い「大和肉鶏」を開発した。

奈良の伝統を受け継いだ素材に地場野菜を加えた「焼きそうめん」は、まさに奈良の食文化を新しい発想で生かした料理といえる。さっそく試食させていただいたが、和風ながら少しこってりとして、そうめんのコシも残り、いやまったく「伝統を生かした大和の新しい味」だ。伝統食材と「ママの勘」のコラボが見事に生きている。
これが奈良市新大宮の「ごちどり」さんで商品化され、系列店でもメニューに掲載。

「B級グルメ」への挑戦も目指すという熱の入れようだ。ご奮闘を祈りたい。

佐藤 直美



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