お盆の前日のうだるような暑さの中、名阪国道 針ICから国道369号を南へ榛原町を経て伊勢本街道を50分程走る。
三峰山のふもと近くの御杖村菅野というところにある「みつえ高原牧場」を訪ねた。今回 紹介する「大和牛」の生まれ故郷の一つである。太陽が照りつけているにもかかわらず気持ちの良い風が吹き 清々しい気分にされる所である。ここは県内畜産経営の総合拠点とされている県畜産技術センターである。広大な敷地の中に、『ここでは、 育成牧場 と 試験研究 のふたつの機能が大きな役割を果たしているのです』と奈良県畜産技術センターの育成技術課の清水 悟 課長さんにお話を伺った。
「育成牧場」では大和牛をはじめ優良な和牛子牛や酪農家から育成を預託された子牛を広大な牧草地で放牧し充分な運動と日光浴をさせ健康で大きな牛に育てるのを目的としていて、「試験研究」では最先端技術の開発を使い効率的な子牛の生産を推進する役割とされている。場内を案内していただき「こちらでは本当に 牛たちにいっぱいの愛情をそそぎ、細やかな心くばりを持って大切に育てられているのだな」と感じました。それらのことが美味しい大和牛に裏うちされているようです。


<放牧風景>

そもそも奈良県は700年も前の鎌倉時代の末期に 良牛が描かれた『国牛十図』という書物に「良牛の産出十国のひとつ」にあげられていました。ただ 今まで奈良県産の牛肉は少ないながらも県内で流通していたが、特定されたブランドが存在しなかったためにあえて奈良県産という表示はされない場合が多かったそうである。平成15年に「歴史ある良質な大和の牛をブランド化したい」という関係者の強い思いで復活をしたのが『大和牛』である。
平成12年に生産者と食肉関係者が銘柄牛懇談会を立ち上げ検討をかさねたところ、つぎの条件(定義)を満たしていなければ 大和牛としては出荷出来ないとしてブランド化の付加価値を高めようと図られました。

1.県内で14カ月以上育てられた黒毛和種であること。
2.おいしいとされる雌牛(未経産)であること。
3.日本食肉格付協会の肉質規格が5段階評価の3等級以上であること。
4.奈良県食肉流通センターへ出荷されたものである牛。

それ以後も協議が重ねられ生産者6名と販売業者22名らで「奈良県大和牛流通推進協議会」を発足された。現在、大和牛 には「大和牛証明書チケット」が貼付され、店頭で消費者は生産者や流通経路等の情報が確認することができるしくみになっているそうです。


<大和牛証明書チケット>

<お肉に添付されるシール>

現在では、1カ月あたり50頭前後が出荷されているが「美味しい牛肉」との評判も高まり料理店からの引合いが多く、生産が追いつかない状態だそうです。 肥育農家も順次 去勢牛やF1(交雑牛)から「大和牛」にシフトされつつあると聞きましたが、その分肥育農家へのリスク(経済的不採算)も多いようです。 我々も地産地消を考え「ちょっと贅沢に牛肉を!」の時には大和牛を食したいものです。


奈良の食文化研究会:岡山 日出男



大和牛ランプ(もも肉)肉の網焼き

<材料(4人分)>
・大和牛ランプ肉・網焼き(焼肉用)用カット 500g程
・黒コショー(粗引き) 適量
・塩(岩塩粗挽き) 適量
・洋からし(練り状態) 適量
・醤油 適量

<作り方>
@焼く15分前に冷蔵庫よりだしておく。(いきなり冷蔵庫からだと表面を調理しても中が冷たいので)
A焼く1分前に塩・コショーを適量打っておく。
B直火に網を乗せしっかりと網を熱しておく。(高温で火傷には注意して下さい)
C両面を炙る程度焼く(焼き過ぎると硬くなり美味しくなくなるので注意)
Dつけダレには醤油に好み程度 洋からしを混ぜ合わす。


ワンポイントアドバイス
今回は、良質な牛肉なので素材自体の味を楽しみます。
調理は簡単だけどそのタイミングと手際さが大事です。
もも肉なので焼き過ぎは絶対にダメ!!ミディアムレァが最適です。