<薬効だけでなく食事の原点を楽しむ>
料理は美味しくないと食べてもらえない。 美味しいけど身体に良くない食べ物なんて言うのも有りますよね。特に成人病など何らかの問題を抱えている人にとっては、食べたいと言う欲望と健康を考えて自制しようとする葛藤は、其の度に結構深刻な事なのです。

美味しくてどんどん食べても安心で、しかも身体に良い。そんな食事が出来ないか!そんな願望が渦を巻いている飽食の現代社会。中々そんな結構な話は?・・ありませんよね。
医食同源と言う四字熟語が人口に膾炙し、健康食ブームが日本を始め多くの国で根強く続いています。
中国には、古来より食事こそ医療の根本、食即是医の思想があり、薬に頼らず日常の食生活に注意することで、病気を防ぎ、健康を保つことが出来るのだと説いています。病気を治すのも食事をするのも、生命を養い健康を保つためで、其の本質は同じだと言うのです。

漢方医学は中国の古典「神農本草経」を原典として発展してきた「本草学」が、1500年代に集大成されて、本論52巻、付図2巻の書物になり、日本にも1607年に長崎に伝来し、以来漢方処方のバイブルとなりました。


食生活も現代では様変わりして、あらゆる食品が我々の身近にあり、生活様式の変化と共に、ファーストフードやインスタント食品が幅を利かせ、本来人間の身体がもつバランス能力が押しやられて、偏った味覚と趣向が形成され、バランスを欠いた食習慣と飽食が現代病を引き起こしているのです。
そんな現代人に、バランスが取れてかつ身体に潜む病因を緩やかに改善してくれると言う「薬膳料理」が注目されるのは当然と言えるでしょう。 奈良に一軒しかなく近郷にも殆ど見当たらないという、薬膳料理の専門店がありました。
知る人ぞ知る、この店「京小づち」の店主、井上清孝さんは、大阪心斎橋で和食の店を開き精進料理などを手がけていたそうですが、やがて漢方薬に関心を持ち、岐阜高山で著名な漢方薬の研究者のゼミに参加、講師について専門的に勉強。以来漢方生薬を使った料理の開発に力を注ぎ、奈良で薬膳料理の店を開いたとの事です。


<薬膳料理専門店>

<井上清孝さん>



漢方薬としての生薬は、症状に応じて何種類かを組み合わせて処方するのですが、医食同源とは言え、食事は薬そのものではない訳で、漢方処方どおりに組み合わせて使っては、料理として成り立ちません。
特に、生薬をそのままの姿で使うことが多い中華料理とは異なり、和食は味も薄く見た目にも淡白で綺麗なことが求められ、生薬をそのままの姿で使うことはなじみません。 店主の井上さんは、料理の材料としてそのまま使えるものは使い、その他の生薬はスープやだし汁として用いることで、生薬を効果的に取り込む事に成功したとのことです。 例えば、この店のおすすめ自慢料理の一つ、「烏骨鶏薬膳スープ」は、烏骨鶏スープと漢方生薬を煎じ抽出し、其の味や臭いを和らげるために鰹だし汁で薄め、生姜や香草(春菊など)を加えて和風風味に仕立てるのだそうです。



これもお勧めの「薬膳ならまち弁当」(2500円)は、この店のメインメニュー「薬膳コース」のミニチュア版で、41種類もの食材を少しずつ使い、ご飯は古代米の赤米(イライラ解消、渇きを止める、ビタミンB1、Eが豊富)、蓮の実包み(胃潰瘍などに良い、滋養強壮)、クコ、松の実、胡桃入 り薬膳サラダ(美肌効果や血圧を下げる)、あまご甘露煮(カルシウムたっぷり、とうもろこし果糖の使用で糖尿病にも良い)。大和芋の磯辺揚げ入り椀(制酸効果)、子持ち椎茸(動脈硬化防止)、自家製落花生豆腐(滋養強壮、胃腸機能改善)胡麻和え(動脈硬化防止)。さらに古代食の蘇(滋養強壮、カルシウム豊富)等も付き、お茶は甘みを抑えた甜茶(アレルギー性鼻炎、花粉症などに効果)とこだわった組み合わせのセットメニューです。
それぞれ薬効のある食材が、ほんの僅かずつだけどたくさん使われていて、料理トータルとしての効能の程は兎も角として、一つ一つ吟味しながら食べてゆく楽しさがあるように思います。


<薬膳ならまち弁当>

<自家製薬膳酒>

薬効については薬事法などで規制され、明らかな効果表示などには制限がある場合がありますが、然し漢方生薬は其の効果は認められたものが多くあり、当然効き目は期待できます。
勿論、この様な料理は一回食しただけで即効的に顕著な効果が出ると言うものではないでしょう。そういうことも可能性としては有り得るでしょうが、むしろこうした食材を身体の状況にあわせて習慣的に食することで、健康が回復されてゆく事は十分予測されます。 決して安価では無いコース料理(5000円)など、そう毎日のように食べるわけには参らぬけれど、セカセカ食事の日常から脱して、たまにはふっと気まぐれに店に入り、其の効能のほどを伺いながら、ゆったりとした時間の流れに身を委ねて、薬膳料理を食す。料理の薬効以上に効き目がありそうな気がしませんか?食材の一つ一つの味と食感を、驚きと納得の中で噛みしめ味わってみる・・・ どうです?きっと効いてきますよ!


奈良の食文化研究会:林崎 幸一



どくだみ入り餃子

<材料>(3〜4人分)
・豚肉ミンチ200g
・どくだみ50g
・ねぎ50g
・下ろし生姜小さじ1
・餃子の皮
・醤油大さじ1
・味噌小さじ2
・ごま油大さじ2
・みりん大さじ1

<作り方>
@どくだみは湯通しをした後みじん切り。ねぎもみじん切りにして醤油、みりんを混ぜ胡麻油でざっと炒めておく。
Aミンチ肉とその他の材料、調味料を全て入れ、水を大さじ約4を目安に加えながら、良く練り餃子の餡にする。
餃子の皮に包んで焼き餃子にしていただく。(出典:薬膳hp)