奈良のことばに「とっきょりの魚」というのがある。これは、「ときおり」のことで、 盆、正月、祭りなどのような晴れの日には魚が食べられている。 奈良県北部に葛城地方は昔、大和と河内との交流が盛んであり、大阪に水揚げした魚は竹内街道を経て、この地方に いち早く運ばれ、海の幸が生のまま食べられたという。 代表的なものに半夏至のタコ、盆のトビウオ、秋祭りのエイやエソがあり、とくにエソとエイの煮物は葛城地方の伝統料理 として今も受け継がれている。 エソは北海道ではかすべ、宮城ではれんてんと呼び、かすべの煮こごりは昔懐かしい北国の家庭料理の味でもある。 奈良県の北葛城郡の式内櫛玉比売神社の秋祭りにエソが用いられ、別名エソ祭りともいわれている。 古書にエイ、なまず、でんがく、鍋やき、吸い物とあり、これを食べれば下痢が止まるなどの薬効が 紹介されている。 赤エイの煮物は骨(軟骨)をぶつ切りにし、水、砂糖、日本酒、醤油、生姜を入れ、半日ほど煮込み、冷ます。エイは煮たあとの煮こごり(ゲル)の独特 な舌ざわりが賞味されている。 肝臓はおからと煮て食べると香ばしくて美味である。エイは夏から秋にかけてが旬であり、鮮度のよいものを求め、夏ばてや農作業のあとの 栄養補給に食べられたようである。 エイは古代から食用として利用され、庶民になじみ深い魚であるが、近年ではエイの軟骨からコンドロイチン硫酸を抽出し、商品化されており、 地場資源が健康食品として私達の生活に関わっているのが興味深い。 料理を再現提供していただいたのは、香芝市五位堂の居酒屋「漁美」のご主人の玉城さん。 漁美さんでエイの煮こごりを食べることができる。ただし2日前の予約が必要。 営業時間は午後5時から同10時30分まで。木曜日は定休日。1人前500円から。 пF0745-(77)-7450
<材料> ・エイ350g ・水2C ・酒1/4C ・砂糖2T ・みりん ・醤油1/4C ・うす切りの生姜2〜3個
<作り方> @エイの軟骨を6cm角にぶつ切りにして水に十分にさらし、臭みをとった後、水気をきる。 鍋にエイ350g、水2C、酒1/4C、砂糖2T、みりん、醤油1/4C、うす切りの生姜2〜3個を 入れて2〜3時間ほど煮込む。