新緑のまばゆい季節となりました。山菜や春野菜などの収穫をする時期となり、ご近所で農作業の一部を体験できる場所があるというので出かけました。

ここ中増地区は大淀町の北東に位置し、吉野町が隣接しています。また南側に目を移すと吉野川や、桜で有名な吉野山を望むことができます。この地は海抜が約二百二十メートルあり、平地よりやや高くなっています。 その高地の天候を生かし、昔より大和茶や農作物を作ってきました。ここの住まわれる方々はよく働かれる方が多く、農作物の収穫後にはこれらを利用して、お菓子や保存食を作ったりと収穫後にも楽しみがあったそうです。

さて五月も半ばになると、そろそろ新ジャガが収穫できます。大きいのや小さいの。
昔、小さなジャガイモを茹(ゆ)でて、アツアツをおやつとして楽しんだ方も多いと思います。 「やすらぎの里ましが丘」推進委員会事務局として、地域の「食」の普及に努めておられる更井完子さんと友人の池田満智子さんにジャガイモのみたらし団子を教えていただきました。

四年前、三十一年勤めた保育所を退社した更井さんは、この地区が催した「吉野魅惑体験フェスティバル」に池田さんと参加し、釜入り茶作りや茶染めを楽しみました。これがきっかけとなって地域に目が向き、お(しゅうとめ)姑さんがいつも作ってくれた「ジャガイモのみたらし」を地域の活性化に役立てられないかと考えました。数年前から活性化の話が出ていたからです。
ジャガイモ、サツマイモ、サトイモなど、中増地区では”まし芋”といって昔から芋の里として名高い所です。 早速食べさせていただきました。甘辛く、香ばしく、新ジャガの水分を小麦粉が吸い、餅(もち)でもなくジャガイモでもなく、でも、もちもちとしていてくせになりそうな味でした。この時期ならではの”ごちそう”とか。
湯がいて丸めて冷凍できる手軽さ、遊び感覚で作れるのもうれしいものです。

使っている竹串(ぐし)はご近所のお年寄りのお手製です。
お年寄りの方々からはコンニャクやお茶、団子作りなどを教わり、隠れた才能の発見もでき、またご近所同士の繋(つな)がりも密になったと話しています。
中増地区では体験学習の参加を町の広報やインターネットで呼びかけています。調理実習を通じて食の楽しみを認知し、理解していただくことが故郷の活性化や後継者育成に繋がるとの思いからです。
二〜三年前からは遊休地を利用してハス花の栽培を始めました。新しい憩いの場ができそうです。
皆さまも一度ましが丘に足を運び、自然の中でみたらし団子を作ったり、ハスを愛(め)でてみませんか。



奈良の食文化研究会:杉本 光枝



ジャガイモのみたらし団子

<材料>(35本前後)
・ジャガイモ700グラム
・小麦粉350グラム
・塩少々
・タレ砂糖としょうゆを煮込んで好みの味で




<作り方>
@ジャガイモの皮をむき軟らかくなるまで茹でてよくつぶす。
A@を熱い間に小麦粉と塩少々を加えて、耳たぶ程度の軟らかさにまるまで、また手に付かなくなるまでしっかりこねる。
B適当な大きさにちぎって平たく丸め、串に刺し沸騰した湯で茹でる。
CBが浮き上がってきたらクッキングペーパーをしいた皿にとり水気をとる。
DCを網かホットプレートで両面に焦げ目をつけ、ふっくらろ膨らんできたらタレを塗る。