冷たい北風の吹くころになると、温かい汁物が恋しくなります。古くから食べつがれてきた巻繊汁。具たくさんなので、根葉類をふんだんに使ったお汁か煮物か分からないような料理です。ノッペイ汁や豚汁とともに冬場によく作られているこのお汁について考えてみたいと思います。
お盆がすぎ秋風の吹く前後、九月に入ると私たち農家では秋野菜の種まきが始まります。大根、ニンジン、カブ、ほうれん草、コマツナ等々。土の栄養をいっぱい吸った野菜類がすくすく育ち、栄養分をいっぱい含んだ野菜類が出番を待っている冬。露地栽培の野菜は霜が来る前、ほとんど出荷が終わりますが、根菜類は冬を越え春まで長い間、活躍し、今日紹介する巻繊汁もずっと冬の間食べつづけられるメニューです。

今回は天理に伝わる、ふる里伝統料理から選ばせてもらいました。
八種類の野菜を使ったしょうゆ味のお汁です。地域によってほかにもいろいろな野菜が入るようです。
お正月料理に疲れた胃を休めるためにも、根菜類を多く使った具たくさんの巻繊汁で満足感を得て、繊維質やミネラル物質で胃を保護しましょう。こんなすばらしい食べ物が、人間の知恵によってつくり出され、作られ、食べつがれてきたのです。

昨年暮れ、NHKの朝のラジオで、北海道の襟裳岬の方がお正月料理の紹介をしていらっしゃるのを聞きました。最後の方で、ケンチン汁の話が出て、十種類以上の具の入ったこのお汁が正月料理に入っているのを「ええやっぱり」との思いで聞いたのを思い出しました。

私たちの地域でも昔は巻繊汁もお正月料理に入っていたよといわれた事を聞いた覚えがあります。今では汁物といえばスープ、コンソメスープに代表されるように形の分からないペースト状のスープポタージュなるものが主流で、具たくさんな汁物はほとんど忘れられ作られなくなって来ているように思われます。

花芯(しん)は、柔らかめの黄身餡(きみあん=白餡に卵黄を加えて練り上げたもの)。花びらは、練切(ねりきり=白小豆粉に、もち粉と砂糖を加えて練り上げたもの)で色鮮やかな紅に染めたものと白いのを、をれぞれ薄く延ばして、型で抜き、黄身餡のまわりにつける(紅二枚白三枚)。練行衆の花拵(ごしら)えの糊こぼしに似て愛らしい。


ぜひ家庭料理に自然の恵みをそのままの形で生かしたお料理を食卓に乗せていただきたいです。
日本食は古くから食べつづけられて来た食文化を基礎とし作りつがれ、洗練された料理ではないかと思います。世界に誇れる日本料理、日本人が食題(材)を大切に、その物のもつ本質を生かし、食べつがれ作りつがれた食文化を大切にしたいものです。


奈良の食文化研究会:岡本 小夜子



卷繊汁

<材料>(5人分)
・鶏肉100グラム
・シイタケ3個
・ニンジン1/2本
・大根1/4本
・ゴボウ1/4本
・コンニャク1/4個
・ネギ少々
・豆腐1/2丁
・しょうゆ少々
・塩少々
・油大さじ1
・昆布5センチ角2枚


<作り方>
@鶏肉は小口切りにする
Aシイタケはせん切り、ニンジンは半月に切る
B大根はいちょう切り、ゴボウはささがきし茹(ゆ)でる
C鍋を熱し油を入れ1を炒(いた)める
DCに大根、ニンジン、ゴボウ、を入れ炒める
Eコンニャクはスプーンで小さくちぎって茹でDの中に入れ塩で味をつける
F昆布だしをカップ8杯とってEの中に入れる
G豆腐をもみほぐし7の中へ入れしょうゆで好みに味つけする
HGが煮上がっているところへみじん切りのネギを入れる