昭和十六年日本で初めての国産はるさめが誕生しました。ひょうたん印でおなじみの森井食品は国内はるさめ発祥の会社としても知られ、多くのファンを持つ老舗です。この会社は桜井市河西にあり市立図書館から二、三分のところです。その取締役の森井芳子さんに「はるさめ」について伺いました。
名前は製造過程で、じょうろの穴から糸状に出てくる時、まさに春の雨「春雨」のようだというところから名付け、はるさめの元祖となりました。
原料はでんぷんです。国産じゃがいもでんぷんからのものと、中国の緑豆からとれる緑豆でんぷんからのものとの二種類あり、前者は国産第一号のはるさめで、コシがあり、味付きがよく乳白色をしています。
後者は中国から来たもので一千年以上前に生まれた食品で、日本へは六六〇年から六七〇年ごろ、鎌倉時代禅僧が伝えたといわれています。特長としてでんぷん麺(めん)の中では一番細くコシがあり、曲げても折れにくいし、煮くすれしなくて、見た目が銀色でとても美しい。
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●製造方法は
冷凍製法と非冷凍製法に大別され品質は、この製法によって違うようです。
日本・韓国・台湾・タイ・インドネシア・中国と世界的には冷凍製法が一般的です。日本式冷凍はるさめの特徴は、麺自体を完全に凍結してしまうため、麺線の中の水分が凍ってしまい、麺体を解凍すると麺線の中に、小さな空洞ができ、この空洞があることによって料理に味がよくしみ込みます。
●製造工程(冷凍法)は
でんぷん→湯でこねる→糸状にして出す→一〇〇度でゆでて糊化(α化)→水で冷やす→冷凍マイナス一三度−マイナス一五度→解凍→乾燥→定寸切断→袋詰めの順序にはるさめが製造されます。
はるさめは保存食で、そうめんのように虫やカビがつかず、賞味期限は二年ぐらいと、長持ちするということです。さらに淡白な味わいとなめらかな舌ざわりの「はるさめ」はどのようにして食べられているのかと聞くと十人中、九人までが「酢の物」と答えてくれました。
冷凍製法で作られているはるさめは、味付きの良さを利用してドレッシングや野菜の水分を吸収して麺に味がなじんでおいしくコシのある食感が楽しめます。
またサラダ、炒(いた)め物にピッタリ!焼きそば、カレーうどんのかわりに使うと小麦粉と、ひと味ちがったでんぷんならではの食感で味わうことができます。そして冷めたものより、温かい方がおいしい。
でんぷん麺は老化させないことが大切だそうです。またでんぷん麺は水分をはいたり、吸ったりする性質があるので、好みのかたさにゆでて、冷凍して電子レンジでもどしても、いろいろな料理に幅広く使うことができます。
調味料はソース、ドライカレー、しょうゆ、酢、特にオイルとマヨネースを熱して炒めると香りがよく、手早く調理することもできます。麺が固まるのを防ぐにはレモン、すだち、土佐酢などをふりかけるとよい。
また山芋やオクラのように、ねばりのあるものと一緒に調理すると膜を張り、大変おいしくいただけます。
そもそもでんぷんはエネルギー源となり、力や体温となり、体の各機能を調節する働きを持っています。
低カロリーで消化がよいので病人食、介護食にも手軽に調理できるので向いており、材料費も安くすむので新しいメニューにどんどんチャレンジできる食材だと私は思いました。
最後になぜ桜井市がはるさめの産地になったのか、お聞きしたら、全国的に売れ出したため自社だけでは生産がおっつかなくなり、地元のそうめん業者、販売業者にノウハウを提供したり指導することになり産地になったようです。
なお、工場内の二階では料理教室を開いておられ「以前ははるさめは脇役として使われていたが調理法によって主食になるんですよ」と経営者の森井さんがおっしゃいました。
早々に私も家で、「はるさめ丼」と「たらこはるさめ」を作ってみました。モチモチした、コシの強さとツルツルした食感の良さを味わい、甘がらい肉の味とたらこの塩味が、それぞれしみ込み大変おいしくできました。
はるさめを人からひとにおいしさを伝えたい!!
森井さんは、はるさめ一筋に研究と努力を重ねられ、大和の味をいつまでも大事に守り続けられております。
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