蓮根(れんこん)と言えば、奈良で薬膳(やくぜん)料理に携わっている者にとっては、初夏の風物。
吉野の若鮎(あゆ)、郡山の丸茄子(なす=賀茂茄子)の田楽や丸煮(丸茄子は、初夏から夏の終わりまでが旬、秋になると種が出て硬くなる、秋茄子とはちょっとイメージが違う)と共に、白い繊細な生新蓮根を薄く切って砂糖を振り、レモン汁をたらすと、漢方薬膳では、のどの渇きを抑え、吐血鼻血を止めると言われます。清涼感たっぷりな味を思い出します。

奈良にも古くから筒井駅(近鉄橿原線)近くの筒井順慶の城の内堀、外堀の跡に、蓮根畑が残っています。今回はすぐの国道25号線沿いの、矢尾茂様、寺西様の蓮根畑にお邪魔して、お話を聞きました。

昔はこの辺りには外堀にあたり、蓮根畑が多くありましたが、水田と住宅ができて少なくなったとのこと。
もともとこの地は生駒連山と春日山連山との間の低い土地のため伏流水があるのか、地下水が高く、ちょっと井戸を掘ると水が出て蓮根畑に適しているようです。蓮根畑は、水が切れると終わりですから。
今年は開花が早く、七月初めに伺うと赤や白の大きな花がたくさん開いて、「特に赤い花は美しいですね!」と言うと、赤い花の蓮根は細く長く不良品で、白い花には太く短く良品ができると教えていただきました。毎年四月に昨年残した種蓮根を植え替えますが、その時赤い花のできる蓮根か白い花か分からないようです。 また有機肥料が必要ですが「ありまき」の害が一番困るようです。それ以外は水の心配だけしていれば十月ごろから収穫が始まり、来年三月ごろまで次々できるので、農業をしながら作られています。この地の蓮根は鉄分が多く、出荷には皮の鉄泥を洗う事が特に大変ですが、粘りが少なく、太くシャリシャリした口当たりは、正月のおせちの煮物に最適です。

蓮根は、いろいろな部分に、漢方薬として素晴らしい効能があります。
★蓮の実(蓮肉)
胃、十二指腸潰瘍(かいよう)を改善(胃の中の傷を治す)強壮止渇健胃

★蓮根(根基)
涼血解毒鼻血を止めるビタミンC、アスパラギン酸、カリウムを多く含む

★葉(荷葉)
下痢止め、浮腫、食中毒防止

★花のつぼみ(蓮花)
活血、止血、吐血、湿疹(しっしん)を抑える

★花たく(蓮房)
駆〓やまいだれに於血月経過多

★根茎の節部(藕節)
咳(せき)止め、のどの病気に効果


奈良の食文化研究会:井上 清孝



蓮根餅(もち) 揚げ出し椀と焼き

<材料>
・蓮根1キロ
・シソの葉10枚
・吉野葛50グラム
・水400cc

<作り方>
蓮根餅の揚げ出し椀
@輪切りにした蓮根にかたくり粉をまぶし、揚げ出し豆腐をするように油で表面をからっと揚げる
A鍋に吸い物と天つゆの中ほどの味付けにしたつゆを作る
Bお椀に1を入れ、2のつゆを注ぐ。薬味として絞りショウガ、ユズ一切れ、刻みネギ、もどしたワカメ、クコの実(スーパーにある乾燥したものを水から鍋に入れて3〜4分沸騰させ柔かくしておく)等好みで入れる。なお、胃が重い人は大根おろしを絞って椀に入れると良い。

蓮根餅焼き
@グラスから取り出した蓮根を4〜5切れに輪切りにして小麦粉をまぶす
A番茶を炊き出して冷ます。(7カップくらい)
Bポン酢または辛子醤油で熱いうちに食べる