「ガチャン」「ガチャン」という機械音が鳴り響き、あたり一面、何ともいえない茶の香りが漂っていて、夕暮れの仕事帰りの体がスーと心地よいものになったのがなつかしい。
思えば、今はやりのアロマセラピーの効果だったのだ。 今年もまた天候に恵まれ、大和高原は製茶真っ最中だ。五月から初茶の刈り取り、番茶の刈り取り、そして二番茶に向けての畑の手入れ・・・と。

大和茶の名をはせた山添村は、奈良から四十分ほど東の方向へ入った名阪国道沿いの村。 大和高原の恵まれた環境にあって、茶のほか米や生鮮野菜、花卉(かき)園芸、シイタケ・シメジなど、環境に即応した体にやさしい地場産業に取り組んでいる。
山添の茶の歴史は古く、手仕事の多かった昔は、大勢の摘み子さん≠ニほえろ師さん=i茶師)らによって行われる昼夜にかかる厳しい仕事だったようだ。
天候に大きく左右されるという厳しさは今も変わらないが、改良に改良が加えられて、刈り取りでは、常用型茶摘採機が導入され、工場はオートメーション化された共同工場の建設により、労力・茶加工の能力が大きくレベルアップして、これからの茶農家が展望できるものに大きく変わってきている。

「茶」は、昔から「仙薬、延命の妙薬なり」といわれ、珍重されてきた。ビタミンC、ミネラル、タンニン、カフェインなどを多く含んでいるからだ。
近年はまた、抗がん作用のほかに多種病気の予防・制御の効果があることが解明され、健康志向の高まりの中、飲む≠セけでなく食べるお茶≠ニしてもさまざまな試みをされているところだ。
その例として新芽≠使ったテンプラ、出し殻≠使ったお浸しや佃煮(つくだに)などがある。
これらはなかなかおつな味である。また粉末茶(粉茶)≠フ出現で、クッキーに入れたり、ふりかけを作ったり、手軽に「茶」を食することができるようになった。

粉末茶は外観は抹茶とまったく同じ物だが、抹茶の場合、日よけして太陽光線をさえぎって栽培したものであり、粉末茶は太陽光線をたっぷり浴びた茶の芽を瞬時に熱処理後粉末にして作られており、栄養化も高く繊維質の多い健康食材として今話題を呼んでいる。
粉末茶を常備しておくと料理・おやつ≠ヌんなものにもすぐ使えて便利である。 その他の茶の使い方として▽ガーゼに包んで冷蔵庫などの脱臭に▽染色材料として(緑茶・番茶もよし)▽香炉を使ってアロマセラピーにがある。

これから夏に向かって「小豆入り茶がゆ」や「茶そうめん」がお勧め。疲れた体をしっかり休めてくれる。
小さなナベでもいい。いぶして香りを楽しむこともまずおためしあれ・・・。


奈良の食文化研究会:中谷 幸子



茶巾ういろう・大豆入り茶飯

<材料>
茶巾ういろう
・小麦粉100グラム
・砂糖110グラム
・粉末茶大さじ1
・水300cc


大豆入り茶飯
・米5合
・大豆50グラム
・番茶(ほうじ茶)10グラム
・塩10グラム
・しょうゆ少々
・粉末茶少々



<作り方>
茶巾ういろう
@小麦粉、砂糖、粉茶は、一緒にふるいにかけておく
A断熱ガラスのボウルに1.を入れ、少しずつ水をそそいで混ぜあわせて、12分〜15分電子レンジへ入れる
Bラップを広げ熱いうちに2.を均等に分けて形をととのえつ。包み口はひもでしばる
Cあとは冷蔵庫で冷やして出来上がり(急ぐときは凍り水に3.をいれて冷やすとよい)。

大豆入り茶飯
@大豆はフライパンで焦げ目がつく程度にいってから、水に浸して皮をむいておく。(大豆はいったあと、熱いうちに水に浸けると皮がむけやすい)
A番茶を炊き出して冷ます。(7カップくらい)
B米を洗って、炊飯器に入れ番茶液(いつもの水加減でよい)を注ぎ、30分ほどおく
CBに@の大豆と塩、しょうゆを入れて炊きあげる
D器に盛り、粉末茶を少々ふりかけて出来上がり。