ずいきは里芋の葉柄のこと。白茎と赤茎があるが、一般には茎の赤い品種を使って多肥、多灌(かん)水によって葉柄を長く柔らかく作る。外皮をむき、ゆでてあえ物、煮物、汁の実などにする。干しずいきは芋がらともいい、水につけてもどし湯で煮てから料理する。

五月上旬、五条市木の原町ですいきを生産している農家を訪ねました。木の原町はJR大和二見駅から西へ三キロほど行った山間の静かな農村です。堂本良美さんのお宅でお話しを伺いました。
ずいきのタネイモを植え付ける時期は四月中旬から末くらいまでです。寒さに弱いので朝霜の様子を見ながら植え付けをします。保温のために、タネイモを植えたところに籾(もみ)がらをまきます。元肥を十分与えて水やりも十分に必要です。

所の畑で芽が出たばかりのずいきを見せていただきました。まだ芽は小さくて、これがあの大きく立派な茎になるとはすぐには信じられません。収穫は九月から十月が中心です。
ずいきには八ツ頭、エビイモ、トウノイモなどの種類がありますが、こちらでは主に八ツ頭のずいきを栽培しているとのことでした。

ずいきの出回り期は生で食べますが、食べきれないものは保存食として干しずいきにします。干しずいきは水で戻せば生と同じように使えます。
ずいきの調理法を教えていただきました。ずいきの皮をむき適当な長さに手で折り、水(または酢水)にさらしてあく抜きをします。木の原町ではみそ汁の具や酢あえ<酢あえのときはいったんゆでる>にして食べることが多く、暑い盛りに酢のものにして食べると、さっぱりとしておいしいということでした。
また、ずいきは古い血を下ろすといわれていて、お産の後にはずいきの料理を食べさせたようです。干しずいきを戻して、ごま酢あえを作ってみました。歯ざわりが心地よく、素朴な味わいです。生のずいきが出回る季節は、ぜひ生でいろいろな料理を味わいたいものです。

畑ではエンドウやゴボウ、キャベツ、タマネギ、ニンジンなども栽培されていました。堂本さんのお宅や、近所の何軒かの農家では農薬の使用をなるべく控えて、特に除草剤は使わないように栽培しているということです。手間はかかるけれど、安全な野菜を作りたいという思いが伝わってきました。
のどかな農村風景をながめていると、田舎育ちの私はホッと落ち着きます。農業は農作物を私たちに与えてくれるだけでなく、豊かな自然環境を守るのにも大きな役割を果たしていることをあらためて感じました。


奈良の食文化研究会:伊藤 明



ずいきのごま酢あえ

<材料>(4人分)
・ずいき1束
・ごま大さじ5
・酢大さじ2
・砂糖小さじ2


<作り方>
@いったごまをすり鉢でよくすり、酢と砂糖を入れ、どろどろっとなるまでする。
A@に下ごしらえしたずいきを入れてあえる。

ずいきの下ごしらえ
@ずいきは5センチぐらいの長さに切り、太いのは細く割って酢を少々入れた水に2時間ぐらいさらし、水気をきる。
A鍋にたっぷりの水とずいきを入れて火にかけ、煮上がってきたら1〜2分で火を止め、ざるに上げる。
BAを鍋に戻し、だし汁少々と砂糖、塩、酢で下味をつけ、強火で箸(はし)でいり上げるようにして水分をとばす。あとはいろいろな料理に使える。