「なにか、おいしいものないかなぁ」「軟らかくて、甘いネギを作っている人がいるよ」会員同士の会話から、早速見せてもらいに行くことになった。場所は平群町福貴の新興住宅街の一角。
20種類を超える野菜の栽培と直営をしている西川幸子さんの畑におじゃました。

「へぇー、これは何ネギですか?」「下仁田ネギといって、炊くととろっとして甘味があるし、おいしいですよ」と西川さんの頼もしい笑顔が返ってきた。土の中から引き抜かれた太ネギは真白でつやつや。ネギというよりタマネギに近い香りがする。
身長は60センチとちょっと低めだが、太さが4〜5センチもあって、肝っ玉母さんを思わせる。このネギは別名殿様ネギともいい、各地でいろいろに呼ばれているらしい。初霜が降りるころから早春までがおいしい時期。青い部分も含めて短時間で軟らかくなり、 白ネギ、細ネギにない独特の味が人気だ。特に鶏肉とは抜群の相性で、奈良県が誇る大和肉鶏とのすき焼き風は、ぜひとも試していただきたい味だ。その他、串焼き、しぎ焼き、天ぷらも美味。ビタミンB1、B2、C、カルシウムなども多いそうなので積極的に使いたい。
このネギを「大和太ネギ」として郡山で生産していると知り、JA郡山・生駒地区統括、龍田支店へ。副支店長の上林一男さんを訪ねた。

上林さんは、ネギ作りが高齢者でも細々と続けられ、計量で、霜地栽培が可能なことなどに着目。十数年前に農業技術センターが、奈良県の気候風土に合っているので特産品に、との取り組みをしていた経緯もあって、1昨年から栽培が始まった。
現在は大和郡山市、生駒郡、生駒市、北葛城郡、明日香村などの農家50軒が2,5ヘクタールを栽培している。10月末から収穫でき、1本100円前後で「鍋太郎」のブランドで大手スーパーに並ぶ。

しかし1月、2月になると、「味は良いのに葉が茶色くなるので売れにくいんですよ」と悩ましげに話す上林さん。そんな理由で今は点灯から姿を消している。
そこで道の駅・くまがしステーション(平群町)をのぞいてみた。ここは農家、非農家を問わず、自分のところでとれた物を直売しているのだ。自家消費できない野菜や花、果物などを持ち込める所があるなんて、なんとイキなんだろう。
この直売所に太ネギを出していたのが坂上正人さんだ。趣味で始めた農業にすっかりはまり、仕事をやめた。終日畑で過ごすと言う。

畑にはホワイトタワーという種類で、普通の白ネギを太くしたようなネギが育っていた。味をふくめ全体的に両方の中間といった感じだが太ネギより、しゃきっとした食感が新鮮だ。
作物を通して、大地に根ざして大らかに生きる人たちのエネルギーを、たくさんいただいた。これらの太ネギが多くの人々の口になじみ“大和の味”となり、永く愛されるよう、陰で応援していきたい。


奈良の食文化研究会:藤井 耀子



ねぎま丼

<材料>(4人分)
・太ねぎ4本
・マグロ200グラム
・煮汁(水カップ1、しょうゆ大さじ4、砂糖、みりん、酒各大さじ2)

<作り方>
@ねぎは青い部分も一緒に斜め1センチ幅に切る
Aまぐろは1センチ厚さに切る
B鍋に煮汁の材料を入れて煮立てて、ねぎを入れる。再び煮立ったら弱火でねぎがしんなりするまで煮る
Cマグロを加えて、好みの加減に火を通す。マグロは中が赤いくらいがおいしい
DCを溶き卵でとじて、ご飯の上に乗せる。粉ざんしょうや七味ふりかけるとおいしい