大和には日本の「はじめて」がいっぱいです。古代わが国の首都であり続けた奈良。ここには、いにしえに彩られた世界遺産をはじめ、さまざまな時代の文化が息づいています。 まさに日本人の心の“古典”ともいえるのじゃないでしょうか。
多様な歴史の集積を持つ橿原、明日香の地にこの秋ミレニアム記念として、私たちを育んでくれた郷土の歴史、自然、風土、文化をテーマとしたすばらしい万葉文化館がオープンしました。
訪れてみましたが、内部は伝統芸能や、雅楽演奏のイベント、さまざまな万葉歌に出合い、古代を楽しむ体験もして、タイムスリップしたような時でした。

のどかな田園風景の広がる中、ひときわ燃えるような紅い曼珠沙華(まんじゅしゃげ)の花のあぜ道を通り、秋の万葉路を満喫しました。帰りに大和三山のひとつ、畝傍山のふもとの森、 厳かな雰囲気につつまれた橿原神宮に参拝、わが家一族が結婚式、お宮参り、七五三参りなど生活の中での行事には必ず訪れる聖域に、久しぶりに立ち寄り、参道で幼い日の なつかしい味「埴輪まんじゅう」に出会いました。店の入口に、土偶によく見る赤黄色の大きな染め抜きの布看板。
のれん、菓子容器も「埴(はに)色」一色で装丁された店主のこだわりには感心します。

店内で「埴輪のティタイム・セット」を味わい、まんじゅうづくりの苦労話やルーツも教えていただき、あつかましく作業場へ案内していただきました。
戦前、戦後、食糧難で甘味なき時代にも、がんばって支え、伝承された「まんじゅう」です。
小規模ながら、近代化された衛生的な仕事場は焼きまんじゅうのおいしい香りが充満しています。餡に一工夫、衣に二工夫と、いろいろ秘伝があるそうです。 焼きあがった埴輪の馬、人、鈴、瓶などの形から当時の生活を知ることができるし、また、素朴な原始美術の作品として愛されるのじゃないでしょうか。

昭和15年ごろ、祖父母と参拝の帰り道、必ず食べさせてくれた味、ふんわりやさしい舌触り。
そして、こし餡のほんのりしたまろやかな甘さが生み出す素朴な味わい、皮と餡の絶妙なバランス。 一口食べると思わず頬がゆるんでしまう、昔懐かしい飽きのこない味です。 地元でも何か行事があるごとに人の集まる場所には必ずお茶受けに使ったとか。そして神宮の参拝のお土産にと、広く県外のおなじみさんも多いようです。
神宮までの参道には、店先に並ぶたくさんの埴輪、土偶たちの店と共に埴輪まんじゅうはピッタリ寄り添い、大和のまさに、古墳時代に引き込んでくれるような気がしました。

問い合わせは
橿原市久米町神宮前905 埴輪まんじゅう本舗
TEL:0744-23-2525・FAX:23-2901


奈良の食文化研究会:奥村 幸子



古代のクッキー

<唐辛子>
荒挽きの小麦粉100グラムに塩とごま大さじ2を入れて練り上げ、適当な形に仕上げごま油できつね色に揚げたもので、日本の和菓子の原点が隠されている。生地を麺棒でのばし、5センチ円形生地を2つおり。端はねじ曲げる。油で揚げる

<赤米の団子>
赤米20グラムを粉状にしてだんごの粉100グラム、熱湯90ccで練り、耳たぶよりやや固めの団子に仕上げ蒸し器で10分ほど蒸す。そしてフライパンでこげ色を付けてもよい。そのまま、ゴマダレやきな粉をまぶしてもよい。形は勾玉(まがたま)型。