もちは、祭りや祝事など、おめでたい時には必ずついて神仏にお供えした。昔は、年中いろいろな行事のたびに作る重要な“晴れ食”だった。
1〜2月の寒の間には、「かきもち」を作る。
青ノリや桜エビなどを入れ、手間をかけて作り、1年中のおやつになるよう、土蔵や納屋などで保存したらしい。
「かきもちはまず、つきたての餅を、こうじぶた(長方形の浅い木箱)に入れ、隅々まで行き渡るようにのす。2日ほど経ったら、平均に乾燥するようにひっくり返す。
4〜5日したら、大きなのしもちの長い辺を、もち切りで切り、その1枚1枚を5等分ずつ切りそろえる。ワラで編んで、天井からつるして乾かす。風に当てると割れるので気をつける。
割れたものをサイコロ状に切って、こうじぶたに広げて干しておくと、「あられ」になる。
大正、昭和の初めごろまでは、どこの家でも冬には、納屋の天井に「かきもち」をワラで編んでつるしていた。そんな冬の風物詩も、さまざまな種類のお菓子が市場にあふれる今では、
ほとんど見られなくなって久しい。
生駒郡安堵町の歴史民族資料館で、「かきもち」「カルメ焼き」「シキシキ焼き」など懐かしいお菓子を作る体験会があると聞き、数人の友人とともに参加してみた。
資料館では、近くの林耕田を借りて、
古代米の赤米作りにも取り組んでいる。体験会当日は、赤米で作られた「かきもち」を食べてみたが、何とも懐かしい素朴な味が、口いっぱいに広がり、うれしかった。
子どものころ、祖母と一緒に火鉢を囲んで、網で色とりどりの「かきもち」を焼いて食べた思い出が、懐かしく心の中に蘇ってくる。
「カルメ焼き」は、見ていると楽にできそうだが、実際やってみるとなかなかコツをつかむまでが難しい。直径10センチほどのきれいな形に膨らんでくると「ふくれた!」と思わず歓声をあげたくなる。
丸いきれいなベージュの色のカルメ焼きを食べてみると、昔なつかしい夜店で食べた味だ。お祭りのにぎやかな光景や、わくわくする気持ちを思い出して、一時幸せになった。
「シキシキ焼き」は、小麦粉に砂糖を入れ、水で練って焼いたホットケーキのようなものだ。農作業が忙しくなると、おやつとして盛んに作られたらしい。
焼き立てに、刻んだネギと削り節をふりかけて食べてもよい。これは簡単にだれでもでき、クレープのように2つに折って、中に何かをはさんで食べても楽しいと思う。
資料館では、地元のお年寄りが先生になって、灯芯ひき(安堵町の伝統産業)や、各種体験会がいろいろと催されている。
安堵町歴史民族資料館:0743-57-5090
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