日差しが強くなると、冷たい飲み物が欲しくなる。
都祁村でおいしいトマトジュースを作っていると聞き、さっそくおうかがいした。 榛原町から車を走らせると、平群町ではもうとっくに散ってしまった桜がまだ咲いていた。それだけこのあたりが寒いということなのだろう。 JAならけん都祁村支店の前で案内をお願いした中尾秘代子さんが待っていてくださった。 さらに進み、右に折れ、少し上がった所に農畜産物処理加工施設があり、営業主任の北中さんにお話をうかがった。

この施設は村の施設だが、委託を受けて組合組織で運営しているとのこと。
都祁村は以前からトマトの産地で、生食用を作っていたが、栽培農家の高齢化や減反政策もあり、 手間をかけずに作りやすい加工用トマトが栽培されるようになり、平成4年にトマト果汁100%の「むてんかくん」が誕生した。塩や添加物も一切使っておらず、水でも薄められていない。 ジュースの名前は公募し、村内の主婦が名付け親。

作り方は、農家から持ち込まれたトマトを洗浄を2回し、つぶして絞り、汁とかすに分ける。これを90度で30分煮て、充填器に移し変えてさらに90度で十分煮る。
これを90度に熱くした瓶に詰め(熱いもの同士を詰める)、キャップをして40分間殺菌する。後は自然冷却。 通して2〜3時間かかる。
一度に作る量は120〜130kgの原料から500mlが180本。最初は瓶詰めしても不良品が出たりしてなかなかうまくいかなかったそうだが、 保育所の指導もあり、3〜4年前からやっと良い商品ができるようになったという。

平成9年11月には、全国アメニティコンテストで「あったかまごころ賞」の国土庁長官賞を受賞し、励みになったとのこと。また、マスコミにも取り上げられるようになり、 販売も徐々に広がったそうだ。

トマトの品種は「早生だるま」。聞きなれない名だが、「桃太郎」より酸味が強く、露地栽培。
雑草を防いだり、地温を上げるためにマルチ栽培し、はわせて作る。 栽培面積は約80eで10人の生産者が作っている。
この施設はいつもは3人のスタッフだがトマト収穫時の忙しい時は、その日のうちに処理しないといけないので、パートさんに来てもらうそうだ。 ジュース加工期間は7月末〜10月初めで賞味期間は1年、年間通して飲めるようにしているが、天候により収穫量が左右されるので、早くに品物がなくなってしまうこともあるそうだ。

当初は販売網がないので大変だったが、今では通販が主で「道の駅」「アンテナショップ」など近隣施設で売られている。手間をかけずに安くしたいところだが、生産者の収入も必要なので、 一般より割高。
しかし、材料を吟味し、味にはこだわっているとのことだ。 200mlぐらいの少量のものも検討中とか。
少量であれば、飲みきれるので手軽に飲めそう。ちなみに500mlの中にS〜Mのトマトが10個ほど入っている。 この施設では、トマトジュースのほか、シソジュース、甘酒(こうじだけで甘さを出している)、かきもち、みそも作られている。みそは、各農家が材料を持ち込んで自家用のものも作る。

帰りにJA農産物直売所「はやおきどり」に寄った。ここには施設で作られた品物をはじめ、農家が自分で作った作物を持ち込み、自分で価格をつけて並べている。 土地柄、ワラビ、セリもあり、ワラビには灰も添えられていた。ネギと高菜には、中尾さんの名前がついていた。
時期はずれでトマト畑もジュース加工の様子も見ることはできなかったが、 ジュースには絞ったままのやさしいおいしさがあった。 村おこしで作られた品が、新しい大和の味として定着することを願いつつ、村を後にした。


奈良の食文化研究会:佐藤 直美



トマトゼリー

<材料>
・粉ゼラチン8グラム
・水300cc
・トマトジュース300cc
・リンゴジュース100cc
・砂糖60グラム
・レモン汁小さじ2

<作り方>
@粉ゼラチンは3倍量の水に湿らせておく
A水に砂糖を加えて煮立てる。砂糖が溶けたら火を止めて、先のゼラチンを加えて溶かす
B熱をさまして、トマトジュース、リンゴジュース、レモン汁を加え、グラスに注ぎ冷やし固める
C型に流し込み、2時間ほど置いて固める